「「走れ!T校」のチア版にして、ウォーターボーイズ企画」チア男子!! Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
「走れ!T校」のチア版にして、ウォーターボーイズ企画
柔道一家に生まれた晴希は、試合で肩を負傷。このまま柔道を続けるか悩んでいたところへ、親友の一馬が男子チアリーディング部の創設を提案してくる。
タイトルが、広瀬すず主演の「チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜」(2017)に似ているけれど、直木賞作家・朝井リョウの同名小説(2010)が原作。
朝井リョウ原作の映画化は、第36回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した「桐島、部活やめるってよ」(2012)や、「何者」(2016)に続く3作目になる。
原作は、朝井氏出身の早稲田大学男子チアリーディングチーム"SHOCKERS"(ショッカーズ)に着想を得ている。
また朝井氏の「チア男子!!」が漫画化・アニメ化された後に、映画の「チア☆ダン」は発表されているので、むしろタイトルのパクリは「チア☆ダン」のほうかも。
もっとも「チア☆ダン」は"チアダンス"。
本作は"チアリーディング"という競技の違いがある。
これは意外と大事。"チアダンス"は、"チアリーディング"の踊り部分を抜き出したもの。一般的にはあまり知られていない。
それはさておき。主演に、横浜流星をはじめ、若手俳優をキャスティングする話題作りのは、男子シンクロを描いた「ウォーターボーイズ」(2001)を彷彿とさせる。少なからず、そういった下ごごろは否定できないだろうし、それを目当てに観客が寄ってくる作品。
朝井リョウ的な描写力で若い登場人物の個々の悩みや人間関係が浮き彫りにされているのだが、どうしても典型的なスポーツドラマの域は出ていない。
一言でいえば、「走れ!T校バスケット部」(2018)のチアリーディング版みたい。
こればかりは類似品が多いので仕方ないが、ならば映画化する意味は、アイドル性だけになってしまう。
もちろん部活を通して、人間成長していく青春ストーリーは爽やかである。観て、なんら不満はないが、いろいろと惜しい企画。
(2019/5/11/109シネマズ大阪エキスポシティ/シネスコ)