「素材としては素晴らしいが未来が観たかった」ヒューマン・フロー 大地漂流 doronjoさんの映画レビュー(感想・評価)
素材としては素晴らしいが未来が観たかった
問題提起としては素敵だったし、その取材は称賛に値する。
ただ、問題ばかりが次々と提示されてくるのと、(ドローンによる引きの撮影に象徴されるような)視点がマクロで、一番の悪も「受け入れない国」という大きな概念にフォーカスされたため、映画を観た人を、我々には何もできない…という方向に導いてしまうのではないだろうか。
皮肉にも、映画で批判されていたような、お金は出すから現場で何とかしてください、となる気持ちに共感できてしまった気がする。
難民が生まれる原因、なぜヨーロッパが道を閉ざしたのか?難民受け入れにより皆が幸せになったモデルケースはないのか? などを描くことでもう少しあるべき未来が見え、観た人が向き合う気持ちになったのかなと想像した。
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余談だが、パスポート交換シーンは少し残酷に見えた。
同じ亡命している者ではあるが、圧倒的な自由を持つものと持たないもの、その非対称性を見せつける形になっていたからだ。
とはいえ、アイ・ウェイウェイを責めるわけではない。
彼がこの作品で映し出したものの価値は大きい。
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