劇場公開日 2022年6月17日

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「良い映画を観てもらってこそ日本映画隆盛の礎というメッセージだったのだと思いました」峠 最後のサムライ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0良い映画を観てもらってこそ日本映画隆盛の礎というメッセージだったのだと思いました

2025年6月15日
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鑑賞方法:VOD

峠 最後のサムライ
2022年公開

司馬遼太郎のベストセラーが原作
幕末、戊辰戦争の基本的な事柄が頭に入っていないとついていけないかも知れません
また主人公の河井継之助についても、できれば予備知識を予習しておくべきです

ちょっと特異な映画です
本来なら大河ドラマで取り組むべき内容を2時間弱でまとめたので、総集編風味になるのは致し方ないでしょう

大河ドラマ全50話を総集編上中下の3話にまとめたうちの中と下を見ているような気分です
起承転結の起承はほぼ割愛、
転は大政奉還から西軍との談判まで、結は戦争突入からラスト
という構成です
なので登場人物が何者でそれぞれどういう関係の人物なのか、どのような因縁がこれまでにあったのか皆目分からず、どんどん物語が進行して行きます
なので少々戸惑ってしまいます
監督、脚本の小泉堯史からすれば、そんなことは百も承知の上かと思います
それでもこの作品を映画化したかったということかと思います
とはいえ、ご安心下さい、それでも辛抱して見続けて中盤になるとなかなか面白くなってきて集中できるようになります
終わってみれば、もう終わりかと残念な気持ちになっていると思います
さすがの腕前です
何を残し何を割愛するのか、残したものをどう映像にするのかそれが考え抜かれているからこそのことかと思います
感服しました

小泉堯史さんがどれだけ凄い方かは、他の方が沢山お書きになされているとおりです
公開時78歳とは思えない、緻密でエネルギーに溢れた映画です

峠とは、西軍が長岡へ攻め込む為の峠のことであり、徳川幕府が倒れて、侍の世の中が消滅する世の中に変わる峠のことでもあります

役所広司版の日本の一番長い一日の阿南陸相が二重写しに見えてきました
本作では「城は建物に過ぎん、建物を守る為に我が藩が滅んでは何にもならん!」との台詞がありました

太平洋戦争の終戦もまた峠だったのでしょう
もしかしたら、バブル崩壊も峠だったのかも知れません
そしてまた一つ峠を越える日が近づいている気がします、長岡藩に河井継之助がいたように、今の日本にはそのような人物は見当たりません
何度も峠を越えてサムライはもう死に絶えてしまったのかも知れません

本作が日本映画の峠だったのかも知れないというここのレビューでの意見には唸りました

本作は俺を戦場に置いて行けという映画だったのかもしれません

民の教育こそ、国の礎
良い映画を観てもらってこそ日本映画隆盛の礎というメッセージだったのだと思いました

あき240
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