劇場公開日 2022年6月17日

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「ありの〜ままで〜」峠 最後のサムライ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ありの〜ままで〜

2022年7月5日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

難しい

幸せ

数多くの映画が公開延期になった今日。
日本映画の中で最も延期を余儀なくされた作品が本作であろうし、公開延期になった日本映画も本作でラストではなかろうか。
役所広司×司馬遼太郎ということで割と楽しみにしていた作品。ようやく見ることが出来ました。映画館で公開することにこだわり、ここまでたどり着いてくれたことに感謝です。そして、恐れ入りました。この時代にここまでの本格時代劇が見れることに感激です。

あまり歴史に詳しくない私にとっては、少々難しい表現があったり、無名の人物を描くにしては尺が短かったり、色々な懸念点はありましたが、時代劇としての質はかなり高く、見応えもあって、やはり映画館で見れてよかったなと思えた作品でした。歴史は面白い!もっともっと知識を深めたい、そう思わせてくれた作品でもありました。一作一作、すごく長いですが、是非とも司馬遼太郎の原作も読んでみたいものです。

役所広司含め、豪華キャストが光っている。
小さな役でも華やか。同じく司馬遼太郎原作の、昨年公開された「燃えよ剣」では山田裕貴が演じていた徳川慶喜。本作では東出昌大が演じていますが、こちらもとても良かった。私の徳川慶喜イメージはまさにこんな感じ。気弱そうだけど、実は心がしっかりあって気品のある人物。山田裕貴の追い込まれて投げ出すような慶喜もいいけど、東出の自分を押し殺しながら大政奉還について語る慶喜もいい。とまぁ、こんなほんの数分しか登場していない人物にもしっかり焦点が当てられており、非常に上手く描けている。人物描写が長けています。

もちろん、主人公の河井継之助についても中々よく描けています。先程も言ったように、2時間だと少し物足りないなという印象を受けましたが、それでも2時間の中でしっかりと彼の魅力が伝わってきました。カラスのように、昇っていようと暮れていようと太陽に向かって突き進んでいく。その言葉通り、未来の日本を常に妄想しながら生きていた継之助に心打たれました。知られていない人物にもドラマがある。「大河への道」でも語られていたように、やはり表に立っている人だけが全てじゃないんだなと改めて感じさせられました。

ただ、中だるみがちょっとキツかった。動きにキレがなく、少し緩やかに話が進んでいくのには眠気を誘われてしまいました。全体的に静かなんですよね...そこが不満点。しかし、ラスト際にはいいセリフがたくさんあって。中でもお貞が言われた「愛するとは、一緒に同じ方向を見ること」という言葉が、私の胸をグッとしました。

でも、本当にいい時代劇でした。
自分の知識と理解力さえあれば、もっと評価は高くなったかもしれない。歴史好き、役所広司好きには大いにオススメしたい作品です。機会があればぜひ。

サプライズ