「「サムライの美徳」とは?」峠 最後のサムライ ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
「サムライの美徳」とは?
少し前までの幕末から明治維新に対する認識と言えば、薩長土の開明的な勢力が旧幕府側の保守的な勢力を打倒して成し遂げた正義の革命とするのが常識であった。しかしその後、薩長の横暴さが広く知れ渡り、決して明治維新は正義の革命などではなく、旧幕府側に同情する見方も多くなってきたと思える。この「峠 最後のサムライ」は、そんな旧幕府側の視点で幕末の動乱を描いたものだ。河井継之助は道理を弁え、時代の趨勢を把握している。こんな人物が新しい時代の主役であったら良かったのにと思ってしまう。しかし時代は薩長軍に味方した。平和を追求する河井に対して、薩長軍は横暴な武力統一を目指す。誰が見ても薩長軍に道理はなく、朝廷の威を借りた悪党共にしか見えない。歴史は勝者が作るものだと言うが、その通りである。万策尽きてやむを得ず戦争に突入した河井の無念さがよく伝わる。
「最後のサムライ」という副題が、この作品の性格を良く表している。確かに武士=サムライは江戸時代と共に滅んだ。しかしその精神には、現代では薄れてしまった多くの美徳がある。河井継之助の名言がいくつも出てくるが、その意味を考えながら「サムライ」の美徳を学びたいと思わせてくれる作品でした。
コメントする