「エッセンシャル版「峠」ですらなく…」峠 最後のサムライ しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
エッセンシャル版「峠」ですらなく…
通常スクリーンで鑑賞。
原作は既読。
原作の、主に下巻部分の映画化である。河井継之助の人物像は司馬遼太郎氏がつくり上げたそれだが、北越戦争に至るまでの継之助の行動(上巻と中巻に相当)が描かれていないため、何故長岡藩の自主独立を目指したか、なんのための戦いだったのかがイマイチ分かりにくくなっていると感じた。
やはり文庫本3冊分の原作を、映画で、しかも2時間以内でまとめるには、継之助の人生の集大成である北越戦争に絞って描くことが最良の方法であったのかもしれないが、それにしても時間が足りなさ過ぎの感があった。
北越戦争のシーンにしても、戊辰戦争における激烈な戦闘のひとつに数えられる戦いなだけに、凄惨さを感じさせる描写を期待していたが、戦闘場面が殆ど無く肩透かしを食らった。
特に残念だったのは信濃川から新政府軍が侵攻した場面。原作では折からの豪雨で増水した信濃川が天然の防御壁となり新政府軍を阻んでいたため、よもやここを渡っては来ないだろうと云う理由で兵力をあまり配置していなかった。
だからこそ、信濃川から敵の大群が押し寄せたために継之助の驚愕に繋がるのだが、本作では豪雨の描写は無く平素の信濃川であり、すんなり渡って来られたようにしか受け取れない描写で、継之助の驚愕の意味が分からなくなっていた。
そもそも「峠」の必要があったのか。あくまでも「峠」であらしめるためには、連ドラにすべき案件であろう。
映画化における最適解ではあるものの、そのせいでとても浅い作品になってしまっている気がして、かなり残念だった。
[以降の鑑賞記録]
2023/09/09:Amazon Prime Video
※修正(2025/02/01)