「真実を尽くして行動する姿が印象残る」峠 最後のサムライ bluewaveskyさんの映画レビュー(感想・評価)
真実を尽くして行動する姿が印象残る
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司馬遼太郎さんと言えば大河ドラマで最多の6回原作となった歴史作家の大家だが、登場人物や背景を少々デフォルメする傾向があり、司馬史観などと呼ばれる独特の世界観を築いた。その影響が生んだ最たるものが坂本龍馬と今作の河井継之助の小説での人物像だ。
河井に扮する役所広司は実年齢が撮影当時かなり上だったせいもあるのか、描かれるのは最晩年の北越戦争だ。河井が当初目指した『武装中立』を理想とし、独立的構想が不可避だったように描くが、実際は反対派も多くいたようで、戦争に至った責任の一定部分は河井にあったと言わざるを得ない。その分、河井は総督として自ら日本に3門しか無かった連射式のガトリング砲のうち2門を使って、薩長中心の新政府側にも長岡藩の犠牲と同等なほどの多大な損害を与え、奪われた長岡城を一時は奪還する激戦を指導。自身も最終的に犠牲になることで責任を果たす。(以後、長岡では戦争に導いた人物として長い間恨まれることになるのだが……)
映画では直接描かれないが、後に関西の財界人となった側近を輩出した(それを示唆する伏線は描かれる)ほか、同僚の山本帯刀は処刑されるが、後に再興された山本家の養子に山本五十六がいる。『常在戦場』を掲げて、自分にも周りにも真実を尽くし、嘘のない行動を重ねる河井の姿が印象的だった。
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