劇場公開日 2022年6月17日

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「新選組のように有名ではない幕末のサムライ。戦略を立てながら平和を願う彼の姿にサムライの在り方を改めて考えさせられる」峠 最後のサムライ 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0新選組のように有名ではない幕末のサムライ。戦略を立てながら平和を願う彼の姿にサムライの在り方を改めて考えさせられる

2022年6月16日
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鑑賞方法:試写会

司馬遼太郎の「坂の上の雲」「竜馬がゆく」などは大河ドラマなどで有名だが、彼が書いた「峠」については知らない人が多いのかもしれない。
1977年の大河ドラマ「花神」の原作の1つとして採用はされたが、あくまで1部であり、本作の映画化により初めてその全貌が映像化された。
映画化された本作は、幕末に生きた河井継之助の話で、戊辰戦争前後の長岡藩の話である。
そもそも長岡という地名も新潟県民でないとピンとこないのかもしれない。
しかし、司馬遼太郎が「侍とは何か」を考えるべく白羽の矢を立てたのが河井継之助であり、「峠」により越後長岡藩の家老・河井継之助を世の中に知らしめることとなったのだ。
それは「藩」や「武士」などという仕組みから解放を模索し続け、時代の先を読んでいた人物だからだ。
「侍は民のために存在する」と、戦いのない世を願ったにもかかわらず、時代の転換期による動乱に巻き込まれていく悲劇は「最後のサムライ」の姿を見た思いだ。
幕末の風雲児・河井継之助を演じた役所広司と、その妻を演じた松たか子は、文字通り夫婦そのもので、その凛とした夫婦関係が心に染みた。
この2人以外のキャストも豪華で、「もっと出て欲しい!」と名残惜しく思うほど贅沢な使い方であるが、主役(役所広司)を中心に描くべき作品のため、この思いっきりも潔い。
本作は、徳川幕府の終焉と、あまり知られていない幕末の風雲児と越後長岡藩を改めて学ぶ大事な機会であり、歴史を大局的に把握し、人情的に見ると、より作品の良さが伝わる。

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山田晶子