「女性の自立=生理と経済がリンク」パッドマン 5億人の女性を救った男 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
女性の自立=生理と経済がリンク
21世紀初頭のインドの小さな村。
新婚生活を送るラクシュミ(アクシャイ・クマール)は、妻ガヤトリ(ラーディカー・アープテー)が月経の際に汚れた布を使っていることを知り、健康を案じて生理用ナプキンを買いに出たところ、あまりに高額。
買ってはみたが、普通の生活レベルの一家では毎月買える金額でない。
とはいえ、妻の健康は心配なラクシュミ、自ら安価な生理用ナプキンを作ってみて妻に試してもらうもののモレモレ、上手くいかない。
妻からは、女性の生理は不浄なことだから話題にもあげてくれるな、世間体もある、と言われてしまう・・・
というところから始まる物語は、安価な生理用ナプキンで開発した男のサクセスストーリーであるが、サクセス感が「功を遂げ、名を成す」という常道的レベルに収まらないのがこの映画のいいところ。
途中入るインターミッション(日本では文字のみ出て、休憩時間はない)までは、言っちゃ悪いがフツーのサクセスストーリーの下積み映画でしかない。
が、終盤から俄然面白くなる。
ラクシュミがつくる生理用ナプキンの試用者がなく、どこが悪く、どう改善していいかわからない。
けれども、ナプキンの主成分が単純な綿ではなく、グラスファイバーであることが判るあたりからの面白さは、エンタテインメント的なのだが、副題にある「(インド女性)5億人を救った」段階にくると、どこかサクセスストーリーレベルを超えてくる。
ナプキンを使うのは、女性。
ならば、売るのも、女性。
であるなら、作るのも女性であるべき・・・
虐げられてきたインド女性が自立する一歩として、生理と経済の仕組みがリンクする・・・って、これ、凄すぎやしないか?
エンタテインメント映画手法から、急激な社会派論調。
そしてそしての帰結が、夫婦の愛と慈しみ!
まぁ、成功するうちに、見えないところでラクシュミの男性的なイイカッコシイもチラホラ見えるのだけれど、実は、それが見えるからゆえに、女性を讃歌することもできるのではないかしらん・・・とそんなふうにも思えるわけで。
インド映画ってアクション+エンタテインメントだけはなかった、と改めてわかった佳作秀作でした。