ポルトの恋人たち 時の記憶のレビュー・感想・評価
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壮大な時空旅行を終えたような余韻に包まれる
とても独創的な発想でポルトガルと日本の二つの都市が、そして登場人物の運命が、にわかに重なっていく。歴史は繰り返すと言われるが、この主人公たちはメビウスの輪のような物語の中で、果たしてその宿命から逃れることができるのか。 オリヴェイラのスタッフを擁した異国のシーンは、ここが一体どこなのか瞬時には判別できない不思議な浮遊感を醸し出す。その心境はおそらく観客も、はるばる連れてこられた主人公も全く同じだろう。そこから巻き起こるギリシア悲劇のような人間模様。登場する誰もが安易な出口へ逃げることなど許されないが、そのどうしようもない悲しみが「第2部」へと受け継がれていく様はとても流麗だ。 願わくば、そこからの展開にもっと驚きが欲しかった。ゆったりとした時間軸の中での繰り返しはピンと張り詰めた空気を緩ませる。とはいえ、鑑賞後はあたかも壮大な時空旅行を終えたかのような余韻が心地よく身を包む一作である。
ファンタジー設定と重いリアリティ
18世紀のポルトガルと21世紀の日本。その二つが交錯するミステリアスな映画なのかな~、と思って観てみたんだけど。 ぶっちゃけて言うとあんまり交錯はしないね。 その二つの時代は物語のバックグラウンドとして機能しているだけで、関わりはあまりない。 柄本祐(宗次と柊次)とアナ・モレイラ(マリアナとマリナ)、二人が演じる人物の魂が惹かれあい、時を超えて愛が成就するための物語。 ただ、同じように二つの時代に現れている中野量太(四郎と幸四郎)が、あまりにも可哀想なキャラクターで、そっちの方が気になっちゃう。 ポルトガルでの四郎はまだしも、日本での幸四郎の不幸さときたら…。 もっと「クラウド・アトラス」みたいに前世(と言って良いのだろうか)の因果が絡み合ったり、解かれたりするのかな~、と思っていたので少し肩透かしを食らった気持ちもあるが。 どちらの時代にも共通して言えるのは、弱い立場の人々にとっては、「人を愛すること」すらも困難だということ。愛し合う気持ちは確かでも、愛だけでは乗り越えられない苦しみや絶望。 対照的に、豊かな人にとっての愛は、何の憂いも疑いもなくそこにある。少なくとも本人はそう感じているのだ。 それこそが原題である「Lovers on border」というテーマなのだろう。 宗次と柊次を演じている柄本祐が、うっとりするほどカッコいい。可哀想過ぎた中野量太も、演技を初めて観たけどなかなか良かったと思う。 反面、ストーリーと演出はイマイチ気持ちがノってこなかった。魂と記憶が時代を超える、という設定に対してちょっとリアリティに寄せすぎてるように感じる。 まあ、多分好みの問題だけどね。
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