劇場公開日 2019年1月18日

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「アメリカの皮をかむった韓流ノワール」マイル22 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5アメリカの皮をかむった韓流ノワール

2021年8月25日
iPhoneアプリから投稿

某、男同士のクソデカ感情を巡るブログ経由でNetflixへ。
なので基本その目線でしか観てないわけですが、それからいっても残念な感じ。

基本的にやろうとしてること自体は悪くない、むしろ好きな方向性のはずですが、そのやり方に難が。
なにしろマーク・ウォルバーグ演じる特殊主人公のバックにあるドラマが中盤以降の展開で変化してないのですよ。。

当該の「中盤」がどこか、観た人なら100%わかると思うのですが、全体の呎からするとちょっと来るのが遅い。つまりボリュームが少ない。
作り手としては三幕の扱いなのかな。でも、上記の問題点を解消するにはもう少し長くてよかった。せっかくアクションは盛りだくさんなので、その中でダレ場を作ったり工夫できたのでは。

たとえば「ジョーズ」と比べてみるとよりわかりやすい。昔の作品だし今の大衆向け作品として完全無欠とは言えませんが、少なくとも海に出てからの展開、登場人物同士の関係性の変化はきっちり描かれてる。
やろうとしてるのは似たようなことだと思うので、比べてみると緩急のなさ、変化のなさがよくわかってしまう。

そのせいで手前のパートもターニングポイントを呼び込むための消化試合感が出てしまってる。起きてる出来事は大変ショッキングなはずなのに、こちらとしてはそうは思えない。しんどくない、予想もつく。主人公の感情に乗れてないからだと思う。

超思わせぶりタイトルバックが匂わせていたもの。
主人公の特殊な生い立ち、そこから天職のような現在の職業(超ハード)に就いたことで抱えている問題、抑圧された本音みたいなもの。
それらが解放されることがカタルシスだし本題のはず。
逆にそのためのフリでないなら何のためにあるかわからない、無用なエピソードになってしまう。

ドラマがまったく動いてないわけじゃないのはわかる。でも、こちらに伝わる振り幅としては小さくて、主人公がついに殻を破った、キター!っていう盛り上がりに乏しい。なんとなく想像もつくし、その瞬間の演出もあまりドラマチックじゃない。

予想がついてしまうのは前半のアクションシーンで何となくネタが割れてるせいもあるし、あの人がそういう行動を取ることがあんまり予想外に見えないってのもあると思う。
主人公のドラマが盛り上がっていればこそ、ラストの展開も効果を発揮するし、完璧なクソデカ感情ストーリーだったのに。。

具体的にどうすれば良かったのか提示するのはむずかしいですが、オチがオチだけに作り手はそこにたどりつけさえすれば突破できる!的な脇の甘さがあったのでは。
序盤はテンポが良くて期待できたし、とにかく休まず次の展開を呼び込む手際の良さはあるだけにとても惜しまれます。
なおこちらも珍作ですが、少なくとも特殊主人公の感情の描き方という点では「ザ・コンサルタント」の方がうまくいっていたと思います。「フォックスキャッチャー」でも可。

振り返ってみると全体的に韓国ノワール映画っぽさを感じる本作。しかし、もし本家韓国で製作されたならシナリオはより老練に、呎は長く、そして興行的にはもっと上を行けたのでは、という気がしてなりません。

ipxqi