「出荷オーライ」恋の豚 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
出荷オーライ
作家性の強い城定監督作品。元々の脚本はもっとバイオレンシーな内容で、バッドエンドっぽい感じと取れる語り口(@アフタートーク)だったが、全体的にドライでシニカルな作風に仕上がっている。それも所謂『肥満体型』を揶揄するというコンプライアンス的に表現が許されない時代の、最後の仇花としてのプロットとしてチャレンジした作品だそうだ。確かにデリヘル待機部屋シーンでの台詞は、初めて耳にする人なら、その非人道さに嫌気が差すかも知れない。それも含めての主人公の一種薄弱さに共感が得られず、かなり引いた目線が客席を支配してしまう。ブラックユーモアがイヤらしくストーリーを牽引してしまうのだが、しかし段々と主人公の成長が表情に現れ始めた段階で、身体にコンプレックスを抱く女心の移ろいが作品を彩り始める。相手の男の飄々な言動に振り回されながらも、しかしその正直さと裏表のない自然体がまるで『仏』そのものにみえてくる、そのパラドックスを演出させているfantasyの魔法を懸けられているような浮遊感がそこにある。
実際は体型と性格は相関などなく、ふくよか=おおらかなんてのはステレオタイプのなにものでもない。だからこそこんな夢物語、切ないラブストーリーに昇華出来るのであろう。もっと自分を愛しなさいという強烈なメッセージ性を伝える、中々の力作である。濡れ場を担当した3人の女優は今作が初演技であり、まだまだ惹き付ける魅力は乏しいが、特に主人公役の百合華はその貴重な体格も相俟って、俳優としての鍛練を期待したい。
かなりふんわかとした、ピンク映画の一ジャンルであるが、しかしそんな邦画の種類を絶やして欲しくないと願うばかりである。カタルシスが総てではないのだ。