「子供だから撮れる親の姿。」ぼけますから、よろしくお願いします。 みーさんの映画レビュー(感想・評価)
子供だから撮れる親の姿。
優しかった母親がどんどん変わってしまう姿が、とても切なく泣ける。
書道で賞をもらうほどしっかりした人で、
自分が病気をした時には上京し、料理を作ってくれ、いつも優しく見守ってくれる母親。
その母親がだんだんと、物忘れが酷くなっていく。
出来ていたことが出来なくなり、人の助けも必要となるほどに。自分で自分のことを何かおかしいと気づいているが、それがどうしてなのか、何が原因なのかも分からない。自分のことが情けなくなり、死にたいと言い始める。
そんな状況を撮る側として、私ならカメラを止めてしまうと思う。もしかしたら、怪我をしないように家もリフォームするかもしれない。洗濯機も最新のものを買ってあげるかもしれない。
しかし、敢えてそこを変えずに、ありのままの状況を根気よく撮影していたからこそ、できた作品であると思う。
子供からしたら、怪我をしないように、少しでも楽になれば、と思ってヘルパーを頼むのだけど、それがかえって本人達のメンタルに響いてしまうんだなぁと気づいた。
自分たちは何十年も今まで、自分たちだけでやってきたのに、それができなくなってしまう悲しさ。
人に頼らないと生きていけないという、情けなさ。
人を頼ることを申し訳ないと思ってしまうのは、
見ている方からしたら、制度があるんだからもっと頼ればいいのにと思うかもしれないけど、
今までしっかりやってきた人だからこそ、それがかえって情けなく思う気持ちを強くさせるのかもしれない。
手伝ってくれるとはいえ、自分の家のテリトリーに他人が入ることにストレスは少なからずあるはずだし、その怒りの矛先が、出来ない自分にいってしまう気持ちも分かる気がした。
その葛藤が、記憶がなくなるなかで繰り返される、苦しみが見ていて伝わった。
私の母親は、私たち子供に泣く所を見せる人ではないのだけど、いつかもし、「情けない」と泣く母親を見る日が来るとしたら、どうすれば笑顔にしてあげられるのかまだ分からない。