「予想以上にスタイリッシュな笑い。テンポも非常に良い。役者陣も99点!」記憶にございません! 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
予想以上にスタイリッシュな笑い。テンポも非常に良い。役者陣も99点!
邦画では貴重なこの人なら!と言える三谷幸喜作品。今回もバッチグー。
内容は予告編通りで、記憶を無くした極悪最低の総理が心機一転、『僕は国民の気持ちに寄り添う!』みたいな”the良い総理”に変貌するお話。
記憶が無いので柵も無い!家族との気まずい関係も忘れた!よく覚えてないけどやったろーぜー!的な感じで、まあそのまんまです。
それと先に断っておきますが、本作はコメディなのでいくら総理政治のネタ映画とはいえ、細かい点に関して「ここがリアルじゃない!」だの言うのは非常にナンセンス。小池栄子演じる秘書が短絡的過ぎるとか、そういう事は言っちゃダメ。
さて話題を戻しまして、極悪総理という設定が有りますから、記憶の喪失前には不倫に暴言に怪しい事業までやりたい放題な訳です(笑)。で、まずはそれらを精算していくところから始まります。
この辺までは王道的で、妻や子供との空振りなやり取りに、周囲からの『総理変わりましたね!』のお褒めネタが続く。予想が付きつつも楽しめたし、記憶喪失という要素をふんだんに活かせていたと思う。
絵面も終始豪勢で、切り替わりもテンポも良い。邦画特有の大声で浮いた演技をするウザい奴も居なかったし、とにかく物語のノイズになるような人物が居なかった。その点を非常に評価したい。(警察官がややその枠だったが…)
勿論ギャグのキレっぷりも最高で、良い意味で「ふふっ」となるような笑いの連続だった。一応はこの国のリアルに寄り添った内容ですから、あまりにも国も総理も馬鹿にし過ぎる事は出来ない。だからこそ、ふんだんに盛り込まれた「ふふっ」っとなる”笑い”の蓄積が、ずっと笑顔にさせてくれた。
少し皆さんも目に付いたであろう点として、くどいガラケー描写がありました。本作は某安倍総理にも重なる内容で、決して古臭さは感じさせないのに、何故か浮くほどしつこく出てきた”ガラケー”。これについては私なりに見解がございまして、シンプルに『SNS的な描写は一切しないよ~』というメッセージだったのでしょう。
主人公が総理大臣ですから、当然ネット上での反応なんかが有っても良いハズ。しかし、今回はと言うよりも三谷幸喜作品自体が、登場人物達に焦点が当たった主観的なモノですので、全くの部外者による情報自体が異物なのでしょう。
しかし、どうしても「?」を拭いきれない要素が、終盤にてぶち込まれました・・・・。
・・・・なんと、”途中から記憶が全部戻ってました~!”というドンデン返しがあるのです。しかも、小池栄子との何気ない会話でさらっと流されますので、聞き逃している方も多いかも?
これがねえ~。
最後楽天カードマンがパチンコ当てて記憶が戻ってまた『こんにゃろー!』ってなるオチかと思っていたら、それが回避されたんで普通のハッピーエンドかと思いきやなんですね。
ハッピーエンドなんですけれども、記憶が戻ってたオチは要らなかったんじゃないかと。そもそも記憶が無いから草刈正雄官房長官とも戦えた訳で。
因みに小池栄子とのそのシーンでは小学校時代の作文が読まれるのですが、その小学校時代の先生との再会シーンに何か伏線が有るとかでも無いです。
それに、家族にはどう話すんだ?みたいなその辺の家族とのケジメも微妙な感じで終わっていて、『記憶が戻ってるなら尚更そこ~!』ってなってしまう。
最後の最後でもう一つのネタを、そして本当に心の底から良い総理になれているんだというオチにしたかったのでしょうが、なら色々と補完しなくてはいけないような要素がボロボロ出てくる感じで・・・。
”そこまでは良かった”のに、そのオチのせいで「ん?じゃあこれから大変じゃねえか?」なんてモヤモヤが生まれてしまい、少しノイズが残ってしまいました。
でもまあほんとそこだけで、非常に面白かったです。
名作です。
あ、あと女優陣が最高(意味深)でしたね(笑)。ツインテールの斉藤由貴イケる。