「笑いの「玉手箱」」記憶にございません! ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
笑いの「玉手箱」
笑いの要素満載で、どこを切り取ってもおかしさがある。少し適切でない言い方かもしれないが、コメディの正統派、「教科書」のような印象を受ける。記憶を失った総理大臣をめぐるドタバタ喜劇的な面白さである。中心にインパクトのある設定があり、敵味方入り乱れてテンポよく進行し、意外な結末も待っている。人によって笑える場面が違っても、大多数は自分なりのおかしさを見つけて楽しむことができる。
この優れたコメディの中で一番成功しているのが人物設定だ。ストーリーの中でそれぞれの人物が果たす役割が実に明確になっていて、役者さんが見事に演じ切っている。フィクションだから許される単純化で、人間の下司な面と愛おしい面の両方が人物に詰まっている。人物設定にぶれがないから、考えることなく安心して三谷幸喜の仕掛ける笑いにまんまと乗せられる。
「教科書的な」コメディと表現したが、傑作かというとそれほどでもないというのが正直な所である。爽快感はあるが少し物足りなさも残る。
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