「ほっこりコメディ!」記憶にございません! おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ほっこりコメディ!
予告でとんでもない総理の姿を見せつけられ、絶対にこんな人が総理大臣になれるはずはないのですが、もしなったとしたらどうなるのだろう、と興味を持って鑑賞してきました。
話は予想とは違う方向に展開していき、もっとハチャメチャな総理の姿を期待していただけに、ちょっと物足りない印象を受けました。しかし、それぞれのキャラが立っていて、人間味にあふれ、なかなかおもしろかったです。また、随所に笑いを仕掛け、それでいてメッセージ性のあるストーリーを展開していたのもよかったです。鑑賞後には、ほっこりした気持ちで「ああ、おもしろかった」と口にしてしまう、後味の良い作品でした。さすが三谷幸喜監督です。
その脚本を生かす、豪華俳優陣もさすがの一言です。主演の中井貴一さんは、記憶喪失前後の総理を二重人格とも取れるほどに演じ分けていて、すばらしかったです。そんな総理に振り回されながらも、自身の野望を遂げようとするディーン・フジオカさんや、しだいに総理に好感を抱くようになる秘書官の小池栄子さんもいいアクセントになっていたし、敵役の草刈正雄さんの一癖も二癖もある大物感も実によかったです。他にも、石田ゆり子さん、佐藤浩市さん、斉藤由貴さんらが、がっちり脇を固め、作品世界にどっぷり浸れる2時間でした。
総理大臣を中心に描いているものの、政治的な難解さは皆無で、見るべきポイントはそこではありません。記憶喪失をきっかけに、しがらみから逃れ、自分の思いにしたがって行動する総理の姿こそが、本作の最大のみどころだと思います。そんな総理に誰もが共感し、うらやましく思い、少しだけ勇気をもらえるのではないでしょうか。
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