「神木隆之介の高校生姿に違和感なし!」ラストレター kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
神木隆之介の高校生姿に違和感なし!
WOWOWの放送を録画して観賞。
岩井俊二監督は、そもそも小説家を目指していたという話を聞いたことがあるが、物語を創りだすのが上手い。
もちろん、広瀬すずと森七菜、そして松たか子の魅力もあるのだけれど、ストーリー自体が面白い。
自分が恋した先輩が姉宛のラブレターを自分に託す。そのラブレターを姉に渡せず自分で読んでしまう。
ここまでは思いつきそうだが、時が経って中年になり、亡くなった姉に成りすまして出席した同窓会でその先輩と再会し、偽りの文通に発展する。
先輩には住所を書かずに手紙を出したため、先輩は実家に手紙を送ってくる。実家には姉の娘と夏休みで滞在している自分の娘がいて、彼女らがまた成りすまして返事を出すのだ。
何とも面白い仕掛けではないか。この偽りの文通を発展させて上質の恋愛物語を構築することもできたと思うが、これは観客と娘たちに過去の経緯を説明する手段に止め、あっさりと嘘の関係を解消させてしまう。そして物語は少し重めの本筋へと移っていく。
姉が夭逝した理由が分かって以降が少々ツラい。
広瀬すずだと思うから、余計に酷すぎるのではないかと感じてしまう。
物語は、福山雅治が亡くなった元恋人との失われた時間探しをする展開となり、たどり着いた豊川悦司の辛辣な言葉に打ちひしがれる。
しかし、娘たちと出合うことで、彼の中のわだかまりに決着をつける方法を見つけたようだった。
そして、この出合いは娘(広瀬すず)にとっても、母の無念を清算することにつながったのかもしれない。
同窓会で、若き日の姉(広瀬すず)が卒業生式辞を読み上げる録音が流される。
これが実は先輩(神木隆之介)と姉との関係のきっかけだったことが徐々に明かされる。
そして最後に、これが母から娘へのメッセージに昇華するという、よく練られた大団円だ。
主要登場人物たちは皆、前を向いて歩きだす。
広瀬すずが神木隆之介の前で初めてマスクをはずす場面、神木の息を飲む演技に説得力を持たせる輝きが広瀬すずにはあった。
母校を訪れた福山雅治が、犬の散歩をする広瀬すずと森七菜を偶然見かけるシーンが、実に美しい。
芸達者な松たか子が最初は主人公かと思ったが、狂言回しの役割だった。夫を演じた庵野秀明が妻の浮気を誤解して「ヤシマ作戦」を企まなくて良かった…。