「松たか子恐るべし」ラストレター かぴ腹さんの映画レビュー(感想・評価)
松たか子恐るべし
森七菜をはじめて知った。メロメロになった。
広瀬すずとワンピースを着て犬を連れている姿など妖精のよう。もうイチコロだった。
松たか子は文通が広瀬すずともはじまってから本当に脇役になったのだけれど、姉じゃないのに言い出せなかったり、無様に姑の尾行をしたりと、だめな役に忠実なのが素晴らしかった。存在感が大きいのに出しゃばらずに脇役がしっかりできるとはとても感服した。
と、最近の映画は俳優の魅力でもっているようなところがあり、今回の話もちょっと苦しい。
一言で言えば優等生がDV旦那と一緒になった悲劇。よくある設定で、これで悲しめと言われても……。
「もうちょっと早く来てくれれば……」
の広瀬すずの一言に尽きる。そうなっていれば映画にならないところに無理を感じる。
豊悦の話も面白かったけどラブストーリーで講釈されるようなことではないのでは?欲張りすぎたね。
DV旦那に苦しみ病苦の生涯を送った姉に対して松たか子はあまりにも普通の主婦になってしまって、並べるにはあまりにもドラマ性がない。姉の死に対する無感情さも不自然だ。それが長年の姉に対するコンプレックスの裏返しですらない。姉の死を通じで再会した福山と握手ができた、サインをして欲しいとははしゃぎすぎだ。
見誤るくらい似ているのならキャストを考えたらどうかとも思った。それこそ、広瀬姉妹をそのまま使えば?あの二人なら同窓会で間違えられても不思議はない。すずは鮎美役はよかったけれど、「できる姉」を演じるには少し控えめすぎる。アリスなら……と主張したら、一緒に観てくれた姪に「アリスに高校生は無理!」と一蹴された。まあ、おかげで森七菜を知ることができたからいいんだけど。
タイトルのラスト・レターは未咲が鮎美に残した手紙。神木隆之介と作った高校の答辞。以前も書いたが、ラブストーリーは高校時代のことしか描けないのだろうか。確かに初恋は特別ではあるが。人間として自立したあと、人は恋愛できないのだろうか。それはこの社会の貧しさなのか。映画界の貧しさなのか。
福山雅治の使っていたフィルムカメラが気になる。