「【心を込めて書いた”自筆の手紙”は時空を越えて人と人を結びつける。】」ラストレター NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【心を込めて書いた”自筆の手紙”は時空を越えて人と人を結びつける。】
年に数度だが、両親に自筆で手紙を書く。
電話でも良いのだろうが、何だか味気ない気がするのだ。
(職場では大切な話は直接、個室で話す。手紙だと「Love Letter 」と間違われると面倒だという理由もある・・。)
今作品が素晴らしいのは、手紙が人と人を結びつける様を静謐なトーンで、美しい風景を背景に自然に描き出している処である。
又、ストーリー展開も重層的ながら、破綻なく描いておりとても良い。
未咲の元夫、阿藤陽一というキャラクターがワンシーンだけ出る。
乙坂鏡四郎(福山雅治)と阿藤が、安居酒屋で十数年振りに会うシーンである。
阿藤の傲岸不遜だが、繊細な面を併せ持った複雑で、鬱屈した姿を豊川悦治が凄みを帯びた圧倒的な演技で魅せる。
このシーンは今作の中では異質のトーンで描かれるが白眉である。
阿藤が乙坂に言う。
”未咲の人生にはお前は微塵も影響を与えていないんだよ。今度小説を書くのなら、一人称では書くな!”
このシーンがあるからこの後の乙坂の場面が効いてくる・・・。
当初、”未咲が何故そんな男と・・”思っていたが、惚れるよなあ、この男の”圧”には。(実際に現在も中山美穂さん演じる美しい奥さん(内縁の妻かな?)がいるし・・・。)
乙坂が、阿藤との男としての器の違いを感じて、がっくり肩を落として歩く姿が印象的だった・・。
その乙坂が小説家として一冊だけ本を出版したあと、本を出せなかった理由もきっちりと描かれている。
乙坂が一年間だけ通った”ナカタガイ”高校の現在の風景を写す中に現れた”幻影”のような美しき少女二人の姿が鮮烈である。
驚きつつも、事情を察し乙坂が吹っ切れた感じで、二人の写真を撮る姿。
ラスト近くの乙坂と裕里(松たか子)の別れのシーンも良い。
自分に長年憧れていた裕里からあのような台詞を言われたら、男だったらもう一度、”夢”を目指すよなあ。
乙坂が彼女に手渡したモノ。
それは、彼らの青春の残影、そして未來に繋がる大切なモノ・・。
<自筆の手紙が、時空を越えた様々な恋を導く様を描いた秀逸な物語である。そして、彼らが”再生して、前を向いていく様”を描いた物語でもある。>
これだけ複雑な人間関係と時間の行き来を、監督の独りよがりや観衆への押し付けなど一切のストレス無しに魅せ切る岩井俊二はすごい人ですね。
配役どは、幼児体型の広瀬すずと神木隆之介も大人になる寸前の微妙な世代を演じられる不思議なキャラクターで好きです。
しかし今回はトヨエツとミポリンにアッパーカット喰らいました。松たか子の泣き顔も痺れた。
大人はジャリタレには負けてません。断言。
手紙派のきりんより