「豊川悦司に打ちのめされ、踊り場に泣く」ラストレター LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
豊川悦司に打ちのめされ、踊り場に泣く
豊川悦司に打ちのめされ、踊り場に泣く
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公開日に「Love Letter」を復習していたら、開演時間を過ぎてしまったので、公開翌日に観ました。
乙坂が鮎美と颯香に出会ったシーンからウルウルが止まらず、未咲に呼び止められる踊り場で、涙腺が決壊しました。
以下のに感想を、4点に分けて書きます。
1. 序盤の裕里のドタバタが愉しい
2. 阿藤の言葉の重み
3. 広瀬すずと森七菜の魅力
4. こじらせた福山雅治と、そっくりな神木龍之介
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1. ドタバタが愉しい序盤の裕里
松たか子演じる裕里は、流れで姉のフリを。
それがキッカケで、初恋の乙坂と手紙でやりとり。
その姿が、姉への手紙の仲介役をかってでて、乙坂に近づこうとしたJK時代に重なるのが、愉しかったです。
乙坂の突然の訪問に、すっぴんと慌てる姿も、とても微笑ましい。
これで最後と言いながら、日常を手紙にしたため続ける姿には天然感も。
JK時代を演じる森七菜は、演じてるのかどうか分からない天然演技。
その天然感は大人時代ととてもマッチしていて、その意味で見事なキャスティング。
裕里の夫を演じる庵野秀明には、若干違和感を感じましたが、乙坂からメッセージに怒る姿はとてもリアルで、交換を持てました。
その怒りが原因で、ケータイが水没するのがキッカケで、文通が始まるのも、見事な展開でした。
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2. 阿藤の言葉の重み
本作で、最も心に刺さったのは、豊川悦司演じる阿藤の悪態でした。
子供にまでDVをふるい、果には未咲を自殺に追い込んだと嘯く男に、本当は耳を貸したくありません。
ただ、彼が乙坂に語った言葉はある意味正しい。
乙坂が、どんなに想いを募らせようと、その想いを小説に昇華させようと、未咲の実人生により深く関わったのは阿藤です。
いい年して同窓会で会った元カノ(の妹)に、ずーっと恋してるってLineしちゃう独身中年って、本当にマトモなんでしょうか?
家庭を崩壊させた後も、後添と関係を築いている阿藤の方が、好きにはなれないけど、人としてある意味マトモなのかもしれません。
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それでも、鮎美から未咲が小説や手紙を繰り返し読んでいたことを知らされ、乙坂は救われます。
乙坂も、決して未咲の人生に何の影響も与えてない訳ではありませんでした。
未咲の言葉で小説家になり、振られてからもしたため続けた想いは、しっかり未咲に伝わっていました。
片思いが報われた瞬間に、自分の涙腺も崩壊しました。
「劇場版 そして、生きる」以来のボロ泣きでした。
ただ... 振られた女に囚われ続け、独身で居続ける中年って、マトモではありません。
美咲の死を実感し、小説家として再起を誓ったラストから、乙坂の大人としての人生が、やっと始まるのかもしれません。
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3. 広瀬すずと森七菜の魅力
岩井俊二作品の魅力は、やはり少女を美しくスクリーンに投影する手腕。
「花とアリス」を観た後は、しばらく蒼井優に恋してました。
「Love Letter」の中山美穂も美しかった。
本作でも、広瀬すずの少女感は素晴らしい。
彼女の独特の声と言い回しも、魅力的。
少年時代にときめく高嶺の花として、完璧でした。
一方で、美しい姉と比較されるのがコンプレックスな妹として、森七菜も絶妙。
「天気の子」の大人っぽさとは全く異なり、無邪気でイノセントな表情と演技。
可愛いは可愛いけど、クラスにも普通にいそうな女の子。
演技にもわざとらしさがなく、まるで彼女の日常を観ているよう。
すずと七菜、方向性は全く逆だけど、どちらも魅力的でした。
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4. こじらせた福山雅治と、そっくりな神木龍之介
現実世界ではモテモテの福山雅治が、本作では冴えないこじらせ中年としてハマっているのが、個人的には愉しかったです。
更にその少年期を演じた神木龍之介が、顔がそっくりって訳じゃないのに、えもしれぬ福山感、乙坂感を出していたのも白眉でした。
ホクロをかいたり、演技プランを共有したりという努力が、しっかり画面に現れていました。
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兎にも角にも堪能し、気持ちよく泣きました。
個人的な岩井俊二ランキングでは、「花とアリス」を超えたかもしれません。