「脳性麻痺の若い女性の性と自分探しの旅。」37セカンズ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
脳性麻痺の若い女性の性と自分探しの旅。
出産時に37秒呼吸が止まったことから
脳性麻痺となった女性の自分探しの旅路の物語。
主人公のユマを実際に脳性麻痺で障がいのある佳山明が演じて
います。
一歩踏み出すこと、動き出すことで、
世界が変わる瞬間。
それをHIKARI監督は、映画に刻みつけました。
貴田ユマ23歳・脳性麻痺の女性です。
親友のSAYAKAは漫画家。
SAYAKAのゴーストライターとして安い賃金で働いている。
そんな日陰の暮らしから抜け出そうと、
アダルトコミック誌に作品を持ち込みます。
編集長の藤本(板谷由夏)はあけすけでサバサバした女性で、
「男性体験はあるの?性描写にリアリティがないのね!」
と指摘されたユマは、
性サービスをしてくれる男性を紹介してもらって、
安いラブホで初体験を試みるものの・・・・
(でも風俗の男性って意外と思いやり・・・あるのね・・・)
大人のオモチャを買いに行ったり・・・
前半のユマちゃんの性(セックス)を経験するための七転八倒。
哀しくて可笑しくて、もしかしてこの映画、
障害者のセックスを売り物にする怪しい映画なのかと、
ちょっぴり不安になりました。
ユマを演じた佳山明(かやま・めい)さん。
障害を持つ女性100名の中からオーディションで、
選ばれた社会福祉士の資格を持つ女性です。
生まれつきの脳性麻痺の女性で、彼女の声のか細さと純真さに、
審査員全員が心をわしづかみにされたそうです。
HIKARI監督も明(めい)ちゃんと出会い、
ユマを交通事故で脊椎損傷から、
脳性麻痺で障害が残った設定に書き換えた程です。
全裸のシーンやエッチなシーン。
観てる私は辛くて切なくて胸が張り裂けそうでした。
佳山明ちゃんがこの映画の人身御供(ひとみごくう)にされたら?
(もしも、彼女の人生に傷を残すことがあったら、私は許せません)
でもこの映画の後半への布石として、明ちゃんのヌードシーンは、
本当に必要だったのだろうか?
撮影現場でおだてられたり、半ば断りきれなかったのでは?
と、胸が痛みます。
どんなに勇気と覚悟を持って演じたのでしょう。
溢れた涙と共に「頑張ったね!!」
と言いたいです。
(愛らしい声でゆっくり舌足らず話す彼女は、
本当に可愛いらしい女性です)
ユマにとって漫画作家は、健常者と対等に闘えるフィールド。
(足も手も自由に動かせないけど、漫画は、想像力の翼は無限だから・・・)
前半は母親の束縛と過保護を中心に描かれます。
ユマを利用する漫画家でYouTuberのSAYAKA。
キラキラしたメイドカフェ風メイクのアイドル並みのルックスを持つ女の子。
(親友なのにユマを利用してる。安い賃金で働かせて搾取している)
過保護のあまりにユマを縛り付ける母親恭子(神野美鈴)
…………………母親の取り越し苦労や心配のし過ぎ、痛いほど分かります…………
ラブホで障害者のクマ(熊崎慶彦)を常連に持つ
障害者のサービスを行うデルヘリ嬢の舞(渡辺真紀子)と知り合うユマ。
舞はキップのいい女性で、ユマを新しい世界・自由へと誘ってくれます。
そしてチカラになってくれるホームヘルパーの俊哉(大東駿介)
…………舞と俊哉はごく当たり前のさりげなさでユマをサポートします………
そしてユマが母親と遂に衝突して家出。
後半はガラリと作風が変わって、タイ国へ渡る急展開をします。
ここからが最高に素晴らしいです。
なぜタイへ行くのか?
そこに何が待っているのか?
ここでは触れません。
この後半の、チカラ強さと解放感がともかく最高!
視界が一気に開けるのです。
健常者と同じフィールドに立つ。
ユマがその権利を手にした爽快な、そしてちょっぴりユーモラスなラスト。
前半の怪しげな展開にくじけないで、どうか最後まで映画を見届けて下さい。
ともかく秀作。
大感動が待っています。
琥珀糖さん、コメントありがとうございました。明さんはプロの女優ではないのだから、映し方は配慮すべきでしたよね。彼女が本作の出演を、ユマちゃんのように冒険と捉えていてくれるなら良いんですが。でももし、私達への啓発という使命感に駆られたのだとしたら、障害があるだけの普通の女の子にそんな決意をさせてしまったことを、申し訳なく感じます。