「最後のひとこと」37セカンズ keiさんの映画レビュー(感想・評価)
最後のひとこと
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直近で観たミッドナイトスワンの後と同じようなカタルシス。ミッドナイトスワンは30代、40代の普通の女性の日常が、たかがトランスジェンダーであるだけで…という作品。
37セカンズは過干渉の母親と反抗期の娘の日常が、たかが障害者であるだけで…という作品。
最後の「私で良かった」という言葉は直前までそう言わないでほしいと思っていた。人間てもっと汚くて恥ずかしい感情を持った生き物で、これまでの人生の不条理をあの数日の出来事で受け入れられるようになってしまう人間なんていない、それを言ってしまったら『やっぱりフィクションなんだ』と思ってしまう!嫌だ!と思っていた。思っていたのだ。でも、その直後にあの「私で良かった」という言葉はあの状況だから言えた、言わされたんだ、と気付いた。俊哉さんのような人と一緒に旅をして初めて恋愛のような感情を、少なからず夢馬さんは抱いていたのではないか。そんな人との対話だからこそ、『少しの見栄やカッコつけ』みたいなものがあって、それがあのセリフを言わせた。夢馬さんは言わされた。
そして言わされて初めて自分でも本心から「私で良かった」と思えるようになったのではないか。言ったその時の本音は違ったけど、その後本当に、心からそう思えるようになって、感情が後から着いてきて人生が好転した。
ただの自己犠牲ではなく、単純ではない感情の細かな変化を描いたから名作なのだと思う。
自分自身が『見栄やカッコつけ』で言った自分の言葉に背中を押されたり勇気づけられたりした経験があるからそう感じるのかもしれない。読み違えてるかもしれないが私はそう感じた。
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