「「薄情けなら掛けないほうがまし」(ユーミンのお言葉)」37セカンズ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「薄情けなら掛けないほうがまし」(ユーミンのお言葉)
母親は人形作り、父親はユマに届いた葉書を見る限り画家?。両親の芸術的才能はユマが受け継いだようだ。映画としては、ユマが家出するところまでは、①母親の過保護の重たさへの反発、②自分の才能を利用しているだけの友人への複雑な想い、③自分のオリジナルな絵を描くために体験したことのない世界へ一歩を踏み出す勇気等々、かなり丹念に描いていて感心させられるのに、家出中に父親を探しに行く下りからはあれよあれよとタイまで行ってしまい、かなり粗い流れになってしまって駆け足感が否めない。。同時に、一緒に行ってくれるのは良いが介護師の男の子は自分の仕事はほっといて良いの?パスポートはどうしたの?あんなに過保護な母親が電話一本だけで何もせずに待っている筈はないだろう?…とかなりリアリティーがない話になってしまったのも残念。ただ最後に突然双子の姉の存在がわかったことで、実は脳性マヒで生まれたマユを育てることでもう一人の娘を手放すという選択をした哀しみを抱えて生きてきたこと、それ故にいつの間にか無自覚な過保護ママになっていたことがわかってきて、母親像に深みが増した。渡辺真紀子は、「風の電話」では余り実力はわからなかったが、ここでは役も良かったが腰のすわった演技を見せて大変宜しい。概して周りの女優陣がヒロインの素人の女の子から良い演技を引き出すべく皆が好演。一方、顔見せ程度の尾美としのり(おっちゃんになったなぁ)はともかく、男優陣は存在感なく同行する介護師の男の子の内面描写もなく物足りない。マユは落ち込んだり失望したりもするが、ともかく自分の求めるもの、目指すものをハッキリと見据えて常に前向きなのが良い。