バグダッド・スキャンダルのレビュー・感想・評価
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新聞記事を読んだような気分
なかなか面白い内容だし、国際社会に対する課題を提示したという意味でマジメな意義深い映画だとは思うが、
映画の作りとしては、映像で何かを語るよりもセリフでの説明が多めだし、ものすごく肝心なところ(悪の根源=多国籍企業が利益を貪っている、その状況)は、終始セリフの上でしか語られていないので、軽い印象しか残らない。
映画なのだから食物連鎖の最上位に居る悪役を登場させて芝居をさせてほしかった。
主人公の人生にスポットしたというつもりなのだろうけど、なんだか軽いドキュメンタリーか新聞記事を読んだような気分。
【”汚職は民主主義には付き物だ””イラク崩壊の裏で行われていた事を暴き出そうとした作品”】
ー今作で描かれた内容は、実際に国連で起きた出来事である。ー
父をレバノン米国大使館爆破事件で亡くしたマイケル・サリバン(テオ・ジェームス)が主人公。
彼は、父を良く知っていた国連事務次長のコスタ・パサリス:パシャ(ベン・キングスレー)の指示で採用され、パシャの右腕として活動を始める。
関わったのは”石油食料交換プログラム”。サダム・フセインの圧政により苦しむイラク国民救済策として、当時国連が主導していた活動。
だが、彼がその責をこなすうちに、数々の事実が浮かび上がる。
マイケルの通訳、ナシームは”前任者アベックは自動車事故ではなく、殺されたのだ”と告げる。
そして、パシャがいうバグダッド支部ドゥプレ女性所長はこのプログラムの不正に薄々気付いていたが、パシャは彼女を逆に裏切り者と呼ぶ。
徐々に、このプログラム自体の意義に疑念を持ち始めるマイケル。
物語はナシームがクルド人であるという事を隠し、国連で働く部分から、当時のクルド人が置かれた状況が暗喩的に示されたりしながら進む。
そして、ある日、バグダッド支部ドゥプレ女性所長は”心臓発作”で突然死する・・・。
が、少し残念だったのは、パシャとレジネツォフ(この大掛かりな不正に関係する人物)との関係性がきちんと描かれていない事や、ナシームとマイケルとの恋愛関係が中途半端に描かれている所。
そして、”石油食料交換プログラム”で不正な利益を上げていた世界各国の多くの者の名前は出されずに、パシャが”全責任を負っている”ように描かれてしまっている所である。(彼は、国連の重責を担ってはいたが、この描き方はどうかな・・)
更に、アメリカがサダム・フセインを攻撃する所も”TVで放映されていた場面の流用が多く”今一つ、この国連を揺るがせた不正問題の本質にスポットが当たっていないと感じてしまった作品。
<2019年2月1日 シネマテーク高崎にて鑑賞>
知らなかったなあ。
2002年ごろの話なのに、全然知りませんでした。そんなスキャンダルがあったなんて。
まあベン・キングスレーが出てるってことは、ここがキーマンなんだろうなと予測もつく展開だけど。
こうやって実話を映画化するのは、さすが上手だ。
映画を見ることで、知った史実。
なのでみて良かったです。
なぜ彼は、直ぐに不正を糾弾出来なかったのか?
イラク戦争直前のイラク。国連監視下のプロジェクトでの不正を、新人国連職員が暴く物語。
実話を基にした物語のようです。勉強不足でこのスキャンダルの記憶がないのですが、かなり大規模なスキャンダルだったようですね。
父親の遺志を継いで外交官を志す若者。清廉な志と経験不足のジレンマが全編に描かれています。
ただ、少し浅いようにも思えます。大規模な不正とはいえ、主人公は不正の真っ只中にいます。ほんの一押しすれば、その不正は瓦解するはず。その意味では逡巡せざるを得ない彼の立場が、少し分かり難く感じました。
「彼の恐怖」、「長いものに巻かれる気持ち」或は「上席との人間関係をもう少し密に描く」等々。それらの何れかがあれば、その逡巡も納得出来るものになったように思います。
この世に正義は無いのか!
当時、この汚職事件のことはあまり記憶にない。たぶん難しすぎて脳がシャットアウトしたのか、、、録画してテレビで観ていたので所々見返してなんとなくわかった。絶対に中立で正義でなければならない国連でこんな汚職があるなんて、何も信じてはいけないのでは、と思ってしまう。ニュースだけではなかなか理解出来ないことはあるからこういう実話の映画は真実を知るキッカケになる。難しいけど出来るだけ観るようにしようと思う。
カルロス・ゴーンの出国劇もいずれ映画になるんでしょうね。
国連は常に官軍
だから、その気になればやりたい放題。それ以前に石油を取り巻く人々の狂い具合が、世界をおかしなものにしている現実。逆に、このマイケルが未だ生きてる事が驚きだし、国連がまともだった事、あるの?と聞きたくなるし。
フセインが大量破壊兵器を隠し持っていないとまずかった人達の映画、「バイス」が、もうじき公開になりますが、どんな映画になっているのか。興味津々です。
渦中に身を置いた人間が自ら語る実話だけにリアル感Maxで痺れました!
サダムフセイン時代のイラクが舞台。圧政に苦しむ人々を救済する為、国連主導で進められた石油食料交換プログラムに群がる政官民の汚職と不正を暴露した元国連外交官が、自身の体験を元に書いた小説を下敷きにしたドキュメンタリータッチ作品。平和ボケの私達は、人道支援と言われると何か崇高な活動のように簡単に信じ込んでしまいますが、多額のお金が動くとなれば、利権の奪い合いや不正など当たり前の世界。あの時代に国連がイラクにどのような関与をしていたのか、私も克明には記憶していませんでしたし、そもそも日本ではイラク戦争が始まる迄、かの国のことは余り報道もされていなかったように思います。しかしこの作品を観ると、常任理事国のような大国や現地の政権・群雄割拠する豪族たちが、それぞれの思惑に基づいて権謀術数を弄する外交戦と諜報戦の最前線であったことが良く分かります。作中に織り込まれているロマンスの個所の真偽は良く分かりませんが、全体として余計なフィクションを交えずに、当時の混乱の中でどのような策略と陰謀が行われていたのか、とてもスリリングなタッチで「魅せて」くれました。外交は火の無い戦争であるとも言われますが、こういう上質な作品を観ると、実体験に根差した本物に叶うものは無いと本当に痛感します。
たとえ国連だろうがお金と不正は切り離せない
国連の要人による巨額の汚職事件を描いたスキャンダラスな逸品。
サダム・フセインの時代が終焉を迎えようとしていた2002年のイラク、国連は貧困にあえぐ民間人を救うべく「石油・食料交換プログラム」を主導していた。このプログラムの責任者の補佐官となった主人公は、現地に行きスケールの大きな汚職の存在を知る。
この汚職問題を縦糸に、民族間の対立やアメリカ軍他による解放後の迷走なども絡め、実に興味深い展開となった。
めちゃ勉強になるし、硬派だが適度にエンターテイメント。拾いものと言える作品だ。
♪まるでハリウッド・スキャンダルぅ
♪女とみたらばすぐ誘い出す、これはハリウッドの郷ひろみ。
バグダッドへは、国連の支援金目当てに魑魅魍魎がGO!GO!GO! ♪お金とみたらばすぐタカり出す。
地味な作品だが、製作した真摯さ・勇敢さを讃えたい。
日産ゴーンスキャンダルも小説化・映画化を望む。
私欲って怖い、あの戦争の裏でこんな出来事が
このお話本当なのかと思いたくなるぐらいびっくりする内容でした。
ま、実話なんだろうし、エンディングのその後の事をしっかり語っているので、本当の話なんだどうけど、イラク戦争の裏で、あんな汚職が横行されていたとは、何とも正義ってなんだろうと考えさせられました。
結局、地球上でもっとも悪いのは人間なんだろうし、真面目に普通に生きる事って大切だと思っている人にとっては、何とも皮肉な映画かな・・・・しかし、私欲って怖いな・・・・子供が病院で寝ていて苦しいでいる所を見て、助けたいと思うわないなんて、目を伏せる事が出来る人間って・・・また、私欲の為に、人間の命を簡単に奪うなんて・・・しかも、それが国連だからね・・・・
映画の方は、ある意味、淡々と話を進むので、正直、見る人にとっては辛い思いをするかもしれません。
もう少し派手さがあると良いと思いますが、本当に淡々としています。
しかし、本作品の内容にはショックだな・・・・例えば、災害なので、寄付をしても、本当にその寄付が被災された方に届いているとは限らない、そう思わせる映画でした。
中東の人々の命の軽さ
人種や民族で人の命に重いも軽いもあるはずがない。
このスキャンダル発覚後、国連改革も進み、こうした国連援助絡みの大きな事件は起こっていないし、国連の大半の職員は、昔も今も善良で、高い道徳心を備え、ミッションに対峙し、少しずつでも良い方向に向いていることは確かだと思う。
しかし、改めて、この問題の本質、中東が如何に蔑ろにされてきたのかということを、僕たちは忘れてはならないと感じた。
数度にわたる中東戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争、シリア内戦、イスラム国との戦い…頻発する戦争で一体何人の人命が失われたのだろうか。
そして、クルド人女性活動家ナシームがあっけなく爆弾で殺害されてしまう映画のシーンを見て、このスキャンダルへの怒りや、映画の感想より、何か先に無力感に覆われてしまった。
先般、解放された日本人ジャーナリストについて、シリア難民の男性が、自分たちの惨状を世界に伝えようとしてくれて、本当にありがとう、尊敬しますと言っていた。彼らには、伝える手段がないのだ。
映画の主人公は、今、外交官を諦め、ジャーナリストとして紛争地域を回り、惨状を伝える活動をしているというエンディング・テロップが流れた。胸が熱くなった。
結局、誰もイラクを救おうとは思っていない。
誰が味方で、誰が敵なのか。
結論はわかっていながら、その駆け引きが巧妙で、誰のことを信用していいのかわからない。
なかなか面白かったです。
映画『汚れたミルク』や『ペンタゴン・ペーパーズ』のときも同じことを考えたのですが、自分が事実を知ったとして、果たして内部告発なんてするだろうか。
正義感と保身の葛藤がよく描けている映画です。
あんなにたくさんの犠牲者が出ているのに、お金のやり取りをしている人たちって、本当に血の通っていない人たちなのか、何も知らない馬鹿なのかって思ってしまいます。
中東問題は難しい
このところ連続して3~4作品中東各国が関連した作品を鑑賞しましたが、前回迄は日本人だけが中東問題を分かっていないと思っていましたが、この作品を観てアメリカ人の殆ども中東の事実は解っていないのではと感じました。
なんせ国連の中に不正をしていた人物がいて、更に各国にも不正が広がっていたなんて戦争を仕掛けた国の人々が解るわけ無いですし、自分もこの作品でかなり勉強になりました。
疑惑
イスラムにおける複雑な情勢を日本のメディアはよく伝えてくれない。石油、アメリカ、欧州、ロシア、イラク国内のプレーヤー、そして日本では美化されがちな国連。それぞれのアジェンダ。この事件の図式を伝えることは貴重ではある。
こういう話は真実味が肝要であるが、どうもこの映画にはそれが欠落している。色恋あり、ミステリーあり。結構、無防備。何故そんな容易に重責を担う?何故殺されずに生きている?と疑問が多い。
この話はあくまでもフィクション。2004.1.25に地元紙がリストを報じたのが、このスキャンダルの第一報。作者のWSJでの記事はその後の3月。創作であるが、事実のように誤解を招く描き方になっている。
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