「渦中に身を置いた人間が自ら語る実話だけにリアル感Maxで痺れました!」バグダッド・スキャンダル ホワイトベアさんの映画レビュー(感想・評価)
渦中に身を置いた人間が自ら語る実話だけにリアル感Maxで痺れました!
サダムフセイン時代のイラクが舞台。圧政に苦しむ人々を救済する為、国連主導で進められた石油食料交換プログラムに群がる政官民の汚職と不正を暴露した元国連外交官が、自身の体験を元に書いた小説を下敷きにしたドキュメンタリータッチ作品。平和ボケの私達は、人道支援と言われると何か崇高な活動のように簡単に信じ込んでしまいますが、多額のお金が動くとなれば、利権の奪い合いや不正など当たり前の世界。あの時代に国連がイラクにどのような関与をしていたのか、私も克明には記憶していませんでしたし、そもそも日本ではイラク戦争が始まる迄、かの国のことは余り報道もされていなかったように思います。しかしこの作品を観ると、常任理事国のような大国や現地の政権・群雄割拠する豪族たちが、それぞれの思惑に基づいて権謀術数を弄する外交戦と諜報戦の最前線であったことが良く分かります。作中に織り込まれているロマンスの個所の真偽は良く分かりませんが、全体として余計なフィクションを交えずに、当時の混乱の中でどのような策略と陰謀が行われていたのか、とてもスリリングなタッチで「魅せて」くれました。外交は火の無い戦争であるとも言われますが、こういう上質な作品を観ると、実体験に根差した本物に叶うものは無いと本当に痛感します。
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