劇場公開日 2018年11月3日

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「中東の人々の命の軽さ」バグダッド・スキャンダル ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0中東の人々の命の軽さ

2018年11月8日
iPhoneアプリから投稿

人種や民族で人の命に重いも軽いもあるはずがない。
このスキャンダル発覚後、国連改革も進み、こうした国連援助絡みの大きな事件は起こっていないし、国連の大半の職員は、昔も今も善良で、高い道徳心を備え、ミッションに対峙し、少しずつでも良い方向に向いていることは確かだと思う。
しかし、改めて、この問題の本質、中東が如何に蔑ろにされてきたのかということを、僕たちは忘れてはならないと感じた。
数度にわたる中東戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争、シリア内戦、イスラム国との戦い…頻発する戦争で一体何人の人命が失われたのだろうか。
そして、クルド人女性活動家ナシームがあっけなく爆弾で殺害されてしまう映画のシーンを見て、このスキャンダルへの怒りや、映画の感想より、何か先に無力感に覆われてしまった。
先般、解放された日本人ジャーナリストについて、シリア難民の男性が、自分たちの惨状を世界に伝えようとしてくれて、本当にありがとう、尊敬しますと言っていた。彼らには、伝える手段がないのだ。
映画の主人公は、今、外交官を諦め、ジャーナリストとして紛争地域を回り、惨状を伝える活動をしているというエンディング・テロップが流れた。胸が熱くなった。

ワンコ