「父のsearch(愛)が娘を捜す」search サーチ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
父のsearch(愛)が娘を捜す
行方不明の娘を捜す父…というのはサスペンス・ミステリーによくある設定だが、本作はその見せ方が奇抜。
全てSNSやPC画面上で展開される。
まさに今らしい、現代感覚のサスペンス!
本当に何もかも画面上で。
会話のやり取りも、事件の捜査、話の展開も。
Facebook、Twitter、その他にも、写真や動画、それらの投稿サイトや検索画面、TV電話、ニュース映像、隠しカメラや監視カメラなどなどなど。
今の時代、あらゆる手段を使えば、見れないものも捜せないものも無い。
こういう見せ方で一本、映画も作れる。
凄いハイテク時代になったもんだ…。
でも、幾ら斬新でも、話そのものが面白くなければただのアイデア映画になってしまうが、ちゃんと話が面白い!
二転三転するストーリーに文字通り、画面上から目が離せない。
突如行方不明になった娘マーゴット。
家出か、何らかの事件に巻き込まれたのか…?
父デヴィッドは娘のPCからアクセス。画面(捜索)上に浮かび上がってくる娘の知られざる一面…。
娘の学校の友達。が、親しい友は居なかった。娘は学校では孤立…?
SNSには、怪しい人物や特にコンタクトを取っていた人物が。本音を打ち明けた動画が残されていた。
かつては3人家族だった。母が亡くなってから、父とは…。
デヴィッドからすれば何の問題も無い父娘関係だと思っていたのに、娘の本心は違った。
それが今回の行方不明と関係が…?
父と離れたくて家出したのか…?
しかしある画像から、事件に巻き込まれたような疑いが。
警察も公開捜査に踏み切る大きな事件に…!
SNS故、デヴィッドに対してある事無い事言われる。こういうのは何処の国も同じ。
孤立無援…いや、心強い協力者も。
デヴィッドの弟。
そして、捜査担当の女性刑事。
彼女は息子がおり、息子とは以前問題を抱えた事もあり、親身になって尽力してくれる。
その甲斐あって、事件に進展が。
いよいよ解決にも近付く。
しかしそれは、デヴィッドにとって最悪の結末。
が、何かがおかしい。何かが引っ掛かる。どうも釈然としない。
再びアクセス。
すると画面上から、まさかの人物、衝撃の真相が…!
全て画面上なので、デヴィッドの身に危機が襲い掛かるとか、躍動感ある“動き”などは無い。
が、話の面白味のスリリングさは秀逸!
まるでこちらもSNSにアクセスしたり、PCを使ってるような感覚にさせられる。
あれ、この人物、何処かで見た。
あれ、この画像は…。
画面の端々にヒントや伏線があり(2度見た方が面白い)、こちらの興奮とデヴィッドの動かすカーソルが面白いほどにリンク。
そのカーソルすら、時にデヴィッドの心情を表してもいる。
難を言えば、もっとSNSの深い闇の世界に踏み込んでいくのかと思ったら、それほどでもなく。
『渇き。』や『プリズナーズ』のように、デヴィッドがどんどんどんどん狂気に陥っていくのかと思ったら、こちらもそれほどでもなく。焦燥といった感じ。
勿論、ジョン・チョウの熱演にケチは無い。ほぼ画面と向き合うという難しい役所を見事に演じ切った。
新鋭アニーシュ・チャガンティの巧みな手腕は今後も期待大!
真実はSNSの中に。
…という、この斬新な作風に掛けたレビュータイトルにしようかと思ったが、別のタイトルがいいと思った。
事件のその都度の進展も、ちとネタバレだが事件解決も、壁紙にぴったりのラストシーンの写真も、ちゃんと人の生身の感情が通っている。
父の愛が娘を救った。
後味も良し。
非常に面白かった!