「「近い」からこそ「遠い」、「遠い」からこそ「近い」 SNSのパラドックス」search サーチ マユキさんの映画レビュー(感想・評価)
「近い」からこそ「遠い」、「遠い」からこそ「近い」 SNSのパラドックス
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物語がすべてPC画面上で進行するという試みは面白かったが、そうでなければいけない必然性が見出せなかった。ある事件を捜査していくうちに、被害者や被害者遺族の思いもよらない素顔が明らかになるのはよくあるパターンだ。
親は子どもと「近い」。そして、それまでの関係の履歴を前提に振る舞う。すると逆に、子どもの真の姿が見えない。ネットで知り合った見ず知らずの他人は「遠い」。関係の履歴がないからこそ、真の姿がわかるかのように振る舞うことができる。女子高生が親にも打ち明けていない秘密をオンライン上の他人と共有している。そんなことが起こるのは、まさしく相手が「赤の他人」だからだ。
本作は、いわば「アームチェア・ディテクティブ」を現代の情報環境でシミュレーションしてみた、そのチャレンジの記録ではないのか。ある手がかりから探偵が推理し、助手がその推理を裏づける証拠を見つけ、徐々に真犯人に迫る。決定的な証拠が見つかったところで、探偵は言う。「関係者を集めてくれ」と。そんなミステリーがウェブ上の情報だけで成り立つようになった。探偵と助手をひとりでやれる訳だ。
現代版アームチェア・ディテクティブの誕生を目撃した。『search サーチ』はそんな体験をもたらす映画なのかもしれない。
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