劇場公開日 2019年11月8日

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「絵具は粘土のようで、絵は彫刻のよう」永遠の門 ゴッホの見た未来 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0絵具は粘土のようで、絵は彫刻のよう

2019年11月9日
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それにしても、ゴッホの絵から抜け出たような俳優陣とメイクだ。
ゴッホだけではく、郵便配達人、アルルの女(ジヌー夫人)、そして、医師ガシュ。

前に、ある美術評論家の人がテレビで、美術館のエキシビジョンの鑑賞の方法と言うのを話していた。

始めに全体を歩いて見てから、直感で好きな作品、印象に残った作品、特に自分の家に置けたらいいなと思う作品を見つけて、それらを中心に鑑賞すると良いと言っていた。

特に反論はないが、付け加えさせてもらえたら、所有してたまに出して、じっと見て、頭の中に焼き付けておきたい作品も加えたい。

ゴッホ作品でいったら、「麦秋のクローの野」や「ローヌの星月夜」は、リビングの壁にかけて、ゆっくりくつろぎながら眺めたいが、「星月夜」や「オーヴェルの教会」はそんなわけにはいかない。
どちらかと言ったら、大切に保管しておいて、たまに出して、じっくり鑑賞して、吸い込まれるような感覚を味わいたい。

ゴーギャンがゴッホに、
「お前の絵は、絵の具が粘土のようで、絵は彫刻のようだ」と言う。
付け加えさせてもらえれば、晩年の作品は、構図や線は歪んで、脳裏に巻きついて締め上げるよう感覚を覚えるし、タッチは針でも飛び出しそうだ。
そして、あのずっしりとした大胆な色彩。
ゴッホには何が見えていたのだろうか。
やはり、ゴッホは唯一無二だ。

ゴッホの生涯は悲劇的で、言い方は良くないかもしれないが、ドラマチックだ。

生前は絵が売れなかったこと、弟テオとの交流、ゴーギャンとの親交・確執、耳の切断、精神疾患、テオも決して豊かではなかったがゴッホを最後まで支えた。そして、死。

死の真相は定かではない。ただ、2年前に公開された、ゴッホの絵のようなアニメ「ゴッホ 最後の手紙」でも示唆されたように、自殺などではなく、事故だったのではないかと信じたい。
オーヴェルに移った時は、精神疾患は良くなっていたと信じたい。じゃないと、あれほど多くの作品を残せないだろうと思う。

ポスト印象主義は、後世のアートシーンに大きな影響を与えた。

ピカソは、セザンヌのガルダンヌと言う風景画を見て、これは完成作品なのかと驚き、全体は個の本質の集合(→もっと違った表現だったかもしれない)という考え方を背景にキュビズムを追及する。

これに対して、ゴッホの感情を揺さぶる大胆ともいえる作品は、感情をキャンバスにぶつけるようや表現主義やフォビズムなどに受け継がれます。

やはり、ゴッホは作品を観ましょう。
そんな気になります。

ポスト印象主義に浮世絵の影響が見られることや、白樺派が彼らをプッシュしたこと、東郷青児美術館が大金で「ひまわり」を落札したこともあって、日本ではゴッホは大人気で、エキシビジョンも多く、目にする機会は沢山あります。今は、クオリティの高い画集だってあります。
ゴッホが作中で語るように、彼は絵の中で、作品とともに生きているように思うのです。

ワンコ
ワンコさんのコメント
2020年2月14日

まあ、そうですね。僕は、本当は、俳優界に、メークしなくたって、こんなにも似た人がいるのよってことかと思いました。

ワンコ
きりんさんのコメント
2020年2月14日

その画家を知りたければ、その作品を見れば良いのです。
― こんな当たり前のことがわからなくなってしまった監督の愚行には言葉を失います。
言わば絵を見ないで絵の傍らの[解説文]だけを読みふける残念な態度ですね。そしてゴッホを見ないで、ゴッホを料理する自分の姿を見ている。悦に入っている。自分に酔っている。彼は自分を撮っているのです。
おつむがおかしいのはどちらだよ?と言いたいくらいです。

メトロポリタン美術館で「ゴッホの部屋」に入ったとき、僕は後ろに倒れるかと思いました。部屋の入口で足がすくんでしまった。圧倒的な存在感を放つ絵の波動と色彩の嵐に、感動の余り心臓の動悸にやられてしまったのです。僕にとってのゴッホはあの時の体験で十分。

おっしゃる通り、
〉彼は絵の中で、作品とともに生きている
〉やはり、ゴッホは作品を観ましょう
そうですね、本当にそうですね。

僕は、自分にとって大事な画家や作曲家であればあるほど、誰かが書いたお節介な「伝記」や“エピソード解説”から離れていきます。他者を介さずに作品と自分の一騎打ちをやりたいのです。

最近の映画界の「画家もの」「作曲家もの」の大流行は、《インスタントにWikipedia知識を得ようとするスマホ世代の要請》に応えたものなんでしょうね・・

きりん
Kayoさんのコメント
2019年11月11日

貴方様のレビュー最後の3行それこそ私も思った事です!その3行に感動です!

Kayo
NOBUさんのコメント
2019年11月10日

ワンコさん

 同感です。

 私の場合、穂積作「さよならソルシエ」に引っ張られた所もありますが。

NOBU