劇場公開日 2019年11月8日

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「☆☆☆ 謎だ! 本当に謎だ! ジュリアン・シュナーベル程の、世界的...」永遠の門 ゴッホの見た未来 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5☆☆☆ 謎だ! 本当に謎だ! ジュリアン・シュナーベル程の、世界的...

2019年11月9日
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☆☆☆

謎だ!

本当に謎だ!

ジュリアン・シュナーベル程の、世界的にも評価の高い監督が。今、何故に学生映画の様なホラー映画の撮り方で映画を撮ったのか?全くもって謎だ!

映画は全編の多くがホラー映画によくある画面作りになっている。
画面は固定せずに手持ちで、登場人物達の周りを行ったり来たり。画面は絶えず揺れに揺れカメラ酔いしそうな程だ。

1番分かりやすいのは、ゴッホがあらゆる人物達と会話する場面だろう。
映画冒頭でのゴーギャンとの会話では。カメラは2人の会話を1台の手持ちカメラで、「撮り逃がしてなるものか」…とばかりに。長回しで2人の間を行ったり来たりと、とにかく忙しない。
元兵士との会話では。全てでは無いが、兵士が一方的に喋り。ゴッホの言葉は、画面のオフから聞こえて来る。
あれは牧師なのか?精神病院での会話は、牧師の横顔越しのアップが多い。
映画の後半での弟のテオとの会話では。2人をオーバーラップさせながらの会話で、いずれもホラー映画等でよくある演出だ。

ファーストシーンでもあり、映画終盤に再び描かれる。少女にモデルを頼む場面等は、ホラー描写にしか見えないし。ゴーギャンがアルルを去ると告げると、ゴッホが狂った様に走り出す場面等は、最早ホラー映画でしかなかったし、何よりもカメラ酔いしてしまいそうだった。
ゴッホの映画を観に来たのに。「あれ?俺、『ウトヤ島 7月22日』を観に来たのか?」と、思った程だった。いや本当にマジで!

だが不思議なモノで。ゴッホが自らの耳を切り落とした後での会話では。カメラは固定された状態になる。
(厳密には、レンズを絞っている為なのか?ゴッホの姿に対して、カメラは少しだけ寄ったり離れたりするのだけど。)
観客側の見た目では固定されている様に見えるので。この場面だけが、映画全編の中で際立って落ち着いた雰囲気が漂う。

ゴッホの芸術活動を通した苦悩を描いているだけに、ゴッホ好きならば、お馴染みなモデルとなった人物や。いかにも、「ああ、この雰囲気。この構図はゴッホだなあ〜」…と言った場面が時々映し取られるので、目が離せないのだけれど。映画終盤で、ある有名なゴッホの絵画のモデルとの会話では。ゴッホの肩越しで会話する場面があり…と。
この映画では。人と人とが会話する時に、あらゆる撮り方での会話場面が撮られている。
観ていて、言い方は悪いけれど。まるで学生映画の様に。或る意味でスキルの無い人が、習作の気持ちで映画を撮っている様にしか見えなかった。

もしも数年後に。ジュリアン・シュナーベルが、歴史に残る様なホラー映画の傑作を撮ったのならば。この映画の価値も、死後に価値が高騰する画家の絵と同様に、評価は上がるのだろうけれども。
現時点では、何故?の思いが強すぎてしまい。謎だけが残る作品と言わざるを得ないなあ〜…と。

ところで、初めてゴッホの「ヒマワリ」を見た時に。その異様な迫力に圧倒された記憶があり。何故、生前にゴッホの絵は全く売れなかったのか?が全く理解出来なかった。
作品中に、ゴッホはベラスケスやドラクロワ等の巨匠の作品を仰ぎ見る場面があり。それらの緻密で、人を惹きつける様に計算された構図の作品と比べてしまうと。ゴーギャンがゴッホに言った「君の作品は、粘土を使った彫刻だ!」の言葉は。確かにゴッホの絵は絵の具を盛り上げ、更に何度も重ね合わせていて。当時としては斬新過ぎる作品ゆえに売れなかったのかな〜と、その理由の一端を知る事が出来た。

2019年11月8日 TOHOシネマズ上野/スクリーン8

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松井の天井直撃ホームラン