「【画家でもあるジュリアン・シュナーベル監督が新たなゴッホ像を美しいアルルの風景とともに、アーティスティックな映像で描き出す】」永遠の門 ゴッホの見た未来 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【画家でもあるジュリアン・シュナーベル監督が新たなゴッホ像を美しいアルルの風景とともに、アーティスティックな映像で描き出す】
南フランス、アルルの明るい陽光と緑に溢れた風景が美しい。麦の穂の中、風を両手を拡げ、全身で受け止める印象的なシーンの姿や、ゴツゴツした岩山をキャンバスを担いで登る姿のゴッホ(ウィレム・デフォー)は従来のイメージと違って生き生きとしている。
パリでは花開かなかったゴッホはアルルに移住し、美しい風景を次々にキャンバスに写し取っていく。
”花は直ぐに枯れてしまうが、私が画に書けば永遠に残る・・。”
一方、意気投合した筈のゴーギャン(オスカー・アイザック)はゴッホの早書きを窘め、風景ではなく人物画制作に没頭する。
この辺りで、二人に不協和音が出てくるが、この映画ではそれを映像、セリフのディテールの積み重ねで描く。
ゴッホが徐々に狂気に病んでいく様は彼の視点と思われる映像が、画面下がぼやけている事や焦点の合わない映像などで表現される。
ゴッホが精神を病んで収容されていた診療所の聖職者をマッツ・ミケルセンが演じる。彼とゴッホの遣り取りは青年期に牧師を目指したというゴッホの精神的な支柱が見て取れるし、彼が決して心を全て狂気に乗っ取られたわけではない事を示している。
又、マチュー・アマルリックがガシェ医師と思われる人物としてゴッホの絵のモデルになっている姿で登場するのも、ジュリアン・シュナーベル監督ならではで、嬉しい。
<美しい風景の中で楽しそうに絵筆を走らせるゴッホ=ウィレム・デフォーの姿が印象的な作品である。>
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