「"Turn your heart away from things visible and turn yourself to things invisible."」永遠の門 ゴッホの見た未来 Naakiさんの映画レビュー(感想・評価)
"Turn your heart away from things visible and turn yourself to things invisible."
Vincent Van Gogh was shot on July 27, 1890 and died on July 29, of
a bullet wound to his stomach. In the remaining 30 hours of his life
he never mentioned the boy anything about the incident
surrounding his death.
Md Ginoux never know Vincent had returned the account ledger to
her having filled it with 65 drawings.
The ledger was found 126 years later, in 2016.
トロントの映画祭で、ジュリアン・シュナーベル 監督自らラスト以降に出てくる黄色いものが見えるまでは、観客に対して退席をしないでほしいと最初のあいさつで説明していた。その後映画の試写が終わり、会見が開かれた。まずMCから何故アートに関する映画を製作したのか?そして、どのように、それを描こうと思ったのか?という問いに監督は、「ヴィンセントが映画の中で、人々に生きている実感を感じさせたいと思っていることが第一に挙げられ、しかも生命は一番大切なもので、私自身も生きている実感を感じていたいためです。それが絵画であったり映画だったりもして、人と分かち合いたいと思っていた。」またこのようにも語っている。「絵画15あれば15通りの解釈がある。だから、ファン・ゴッホの伝記にとらわれた映画作りではなく、こういう事も起こりうるんではないかという映画にしたかった。」と優しく、少し笑みを浮かべながら質問に答えていた。
個人的には、amazon.comでのレビューでもあるように一部の場面で画面が揺れることを指摘する方がおられたが、画家ゴッホの視線に合わせた描写にしたかったのか、彼の狂気そのものを描きたかったのか、気になる部分も存在する。しかも、やはりカーク・ダグラスがゴッホを演じた映画「炎の人ゴッホ(1956)」と比較する人も。こんな古い映画を知っている人がおられるとは...。たしかカーク・ダグラスさんは、現在、認知症と戦っていて、まだご存命のはずでは...?存命なら102歳。
ゴッホの伝記的映画に関しては、アニメーション作品も存在する。日本も含め世界各地から参加した120人以上の画家によるゴッホと同じ作風を用いてキャンバス上に油絵で描いたものを高性能カメラで一枚一枚映写したものを映像化した独特な技法を用いた映画「ゴッホ 最期の手紙(2017)」。そこでも取り上げられたゴッホのアルル時代。彼自身が一番幸せだったとされる地、アルル。黄色を基調とした鮮やかな絵画が多く制作され、本作でも逆光や光のあて具合を利用して黄色を強調した場面は嫌味がなく、むしろ見やすく、またある場面は、青を基調とし、またある場面では、多彩な色で背景もゴッホも描いている。しかし、心の不安を描くときは、彼の頭の中でサウンドスケープ(音風景)のように何回も同じ言葉が鳴り響いていた。
-Why do you always have to paint from nature?
I feel lost if I don't have something to look at.
I need something to see.
There's so much to see.
Every time I look, I see something I've never seen before.
-Yes, but what you paint what you do belongs to you.
-You don't need to copy anything.
-Why don't you paint just what's in your mind?What your brain sees?
"Because the essence of nature is beauty."
ゴーギャンの辛辣な意見でもよき友のアドバイスとして真摯に聞いているゴッホだったが、どうもゴーギャンは違っていたらしい。映画の中では、同じ人物を被写体として2人が競うように描く場面が出てくる。それはお互いの絵画に対してのアプローチの仕方が異なることを暗に示しているのか? 次のゴーギャンの言葉....
You paint fast and you overpaint .
Your surface looks like it's made out of clay.
It's more like sculpture than painting.
有名な事件の後、サナトリウムの牧師とゴッホによる問答の様な会話。牧師役をマッツ・ミケルセンが演じている。個人的には、本年3本目のご登場となる。何故、自分自身を’Painter’というのか?また自分が生まれながらの絵描きだという理由は?
It's the only gift God gave me.
So, God gave you a gift so you could paint this?.... Yes.
But don't you see.....
I don't want to hurt your feelings, but don't you see that this painting is...
Unpleasant.
It's ugly.
Why would God give me a gift to paint
ugly and disturbing things?
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Maybe He chose the wrong time.
Maybe God made me a painter for people
who aren't born yet.
アルル時代は、郵便配達員を含め数人の友達がいたと聞いているが、彼のいちづな絵画に対する思いが誤解を呼んだのか、この映画でもそれを幾分かは感じ取れる映画となっている。
弟のテオも彼の死後、半年後には亡くなっていて、兄弟そろって仲良く肩を並べて眠っておられています。
Oh, God.
Will you receive your son?
Chicago Readerの記者が端的にウイリアム・デフォーの演技についてコメントをしている。「デフォーは、監督が画家のビジョンと人間性に対してしたように、彼の能力を使い、全面的に取り組んでいます。」この映画に関してもカナダの日刊紙Toronto Starの記者がこう述べている。「忘我的、悲劇的物語。悲劇よりも忘我を描いている。」
実際のゴッホの年齢とウィリアム・デフォーの年齢と大きく異なることを揶揄される方も実際におられるが、「私は常に俳優然としていない者として出てくる俳優になりたい。」と公言している俳優の1人ウィリアム・デフォーという人。いつも笑顔を絶やさない、気を使いすぎる人。エンターティメントの世界で生きている方です。
最後にジュリアン・シュナーベル監督が、こんなことも述べている「彼の絵画人生で、多作だった時期でもあり、また、お金に困窮しているにもかかわらず、死の前日には、多くの絵の具を含め画材を購入している。そんな人が、自ら命を絶つとは考えられない。」昨日の事でも人は、他人の人となりをわかっているようでわかってはいない。まして、150年前に亡くなった無名の画家の事なんて...。映画のラストは、この監督らしい史実を曲げてでも彼流のゴッホを描いた優しさの表れなのかもしれない。そして、ウィリアム・デフォーという外見とは180度違う”気づかい屋さん”と敢えて言わしてもらえる人柄も映画に反映されている。
ゴーギャンの手紙で締めくくられ、
I am the Holy Spirit.
I am sound of spirit. で幕は下りる...........