サンセットのレビュー・感想・評価
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帝国の落日に、探し求める女が行き着く先
1913年のブダペスト。オーストリア=ハンガリー帝国が解体する5年前、いわば“帝国の落日”の時期(1914年に帝国の皇位継承者が暗殺されるサラエボ事件が起き、同年第一次大戦が勃発)に欧州の中心だった都――という背景情報を知っておくと、描かれる状況やエピソードをある程度理解する助けになるだろう。
エマ・ワトソンを深刻にした感じの若き帽子職人イリスは、亡き両親がなぜ高級帽子店を手放すことになったのか、存在も知らなかった兄がどこにいるのか、真実を求め街をさまよう。華麗な帽子と衣装、瀟洒な帽子店や貴族の邸宅の内装など、ディテールは精緻に美しく描かれるが、全体はぼやけて曖昧だ。その時何がどういう理由で起きたのかを後世の視点から客観視するのではなく、イリスと共にリアルタイムで体験させることが、監督の狙いなのだろう。国の黄昏に、そうとは気づかないまま飲み込まれていくのかと思うと、ただただ怖ろしい。
映画って何だ?と自問したくなる傑作
「サウルの息子」で私に激震を走らせたネメシュ・ラースロー監督の新作。
ここでの評価が低い?あらすじ読んでもよくわからない?長くて暗そう?そんなことはどうでもいい。これは観るしかない。観ずにはいられない。
観終わった直後は4点かなと思った。
かなり集中して頑張ったにもかかわらず、意味がわからない。わけがわからない。筋が通らない。だが、面白かった。
主人公イリスの背中から追うカメラは背景をぼかし、私たちに情報を与えてくれない。かと思えば、誰が発したのか、どこから聞こえるのかわからない声が、すぐ隣からのように聞こえてくる。
少しでも情報を得ようと前屈みになり、息を飲み、のめり込む。それでもやはりわからない。
何もわからず真実を求めようとするイリスと同様に観ている者も暗闇の中だ。何が真実で、何が偽りかもわからない。すべては憶測の域を脱することはない。
冒頭に混沌としたオーストラリア=ハンガリー帝国の説明が入る。時代が第一次世界大戦の直前であることから、戦争に突入した顛末、具体的にはサラエボ事件のメタ的な作品なのではないかと推測を立てて観ていた。
実際にサラエボ事件で暗殺される皇太子が登場して、混乱しながらも恐らく推測は合っているだろうと考え、エンディングを見て確信した。しかし、やはりわからない。
あまりのわからなさにラースロー監督のインタビュー記事などを読んだ。
その中で気になったことの1つは、混乱した時代を表現するのに物語を混乱させたということ。もう1つはドッペルゲンガー。
なるほど、鏡写しのように何度か画面に映りこむ物や人、サラエボ事件の写しである物語、そしてイリスはカルマンでカルマンはイリス。何を言っているのかわからないと思うが、そう、これこそが混沌。初めからわかるようには作られていないのだ。
何故だが自分の中で腑に落ちて、すると途端にとてつもなく面白いものを観たのではないかという気持ちが沸き起こった。
わからなかった。わかろうとのめり込んだ。これこそが面白さの正体。
暗い場面から窓を開け、明るい光を受けるシーンが何度かあるが、そのときの解放感は凄かった。忘れていた呼吸を取り戻し、安堵し、安らいだ。
まっ暗闇の迷路をさ迷い、ゴールの扉を開けた。この作品は、ただそれだけなのだ。
真っ暗なのだから迷路がどのようになっているのかわからないし、どう通ってきたかもわからない。わかるのは手で探った感触と時折聞こえる音だけだ。
迷った。迷いに迷った。迷路の全貌は全くわからない。息も苦しかった。体も辛かった。それでも自力でゴールの扉を開けた。いつもの自分の世界に安堵した。振り返り、面白い挑戦だったとしか思えなくなった。
物語を理解しよう、隠された意味を見つけようと、挑む者のための解けないパズル。
いわゆる普通の、ストーリーと映像と音楽がある作品しか楽しめない人は観てはいけない。
映画沼に嵌まっている、商業作品より芸術作品を好む、もう一般的な映画ファンと話が合わないよねと自覚しているくらいの病的な人向け。
ラースロー監督の次回作は映画館で観たいなあ。
主人公イリスのキャラクター
半分くらいで挫折。
主人公イリスがとにかくよく分からない。
両親の経営していた帽子店で働きたい、無償でも良いからといいながら、初めて兄の存在を知ってからは店の方はほとんど興味なしといった様子。
イリスの視点から見えている範囲で描こうという意図なのだろうか、帽子店から勝手に外に出すぎ。
そして常に思い詰めて表情は暗い。しかもその物腰や言葉遣いはどこか横柄だ。
この先見ても分からないが増すだけだろうと思い、途中で観るのをやめた。
オーストリア=ハンガリー帝国
1913年のブタペスト、高級帽子店に一人の女性がやってくる。
名前がこの店と同じで、自分は創業者の娘だという。
現在の経営者は追い返してしまうが、町をウロウロしている間にいろんな事実を知ってしまう。
カメラワークが独特で見入ってしまう。
こだわる理由
存在を知らなかった兄に何故にそれ程までにこだわる?とイライラしながら見ていた俺。馬鹿みたいじゃないですか……
そう言うオチなんですね。
いやぁ、伏線らしい伏線も無いし。不審な匂いくらいはすれども。へ?これ、回収ですか?とにじり寄って問い質したくなりました。ラストショットは回収の駄目押し。なんか俺には良く分からない謎映画だった。
悪いことは言わん、今すぐここから去れ
監督の前作『サウルの息子』は、よかった。
同じような画の空気を持つが、主人公があまり語らないので、どうも何がしたいのか不明なまま終盤まで行く。表情も辛気臭く、この映画に対する興味がさらに湧いてこなかった。
まあ、親の大きくした身代を番頭に乗っ取られ、なんとか取り戻したいってのはわかるが、全然肩入れしようと思えない魅力のない主人公でしかなかった。
時代を再現
第1次世界大戦前の風景を再現してて、それを見れるだけでもワクワクしました
その時代はどの国も女性の地位は低く、治安が悪かったんだなぁ〜って思いました
全体的には暗い内容とストーリーです
カメラアングルが気になりますが、彼女目線を表現してるんだと思います
なんかい?
安定していた仕事をわざわざ辞めて
遠路はるばる
雑踏と混沌の坩堝にやって来るひとりの娘…
この時代
ヨーロッパの中心だった
オーストリア=ハンガリー帝国の首都だった
ブダペスト
様々な人種と言語と階級と
囁きと怒鳴り声と街の喧騒に揉まれて
眩し過ぎる白日を帽子で遮って
亡くなった両親が経営していた
高級ブランド帽子店
今は他人の店…
来ても歓迎されない
招かれざる客とわかっているのに…
なんのために
ここに立っているのか?
やって来る災いに
突き動かされる…
降って湧いた
行方不明の兄のこと…
火種はそこかしこに…
手ぐすね引いて
誰かが火をつけるのを
待っている…
来てはならなかった?
来なければよかった?
帰れ!と
絡む人たちは警告する…
開かずの扉は開かれる…
上流階級の追憶
物事がうつろい沈んでゆく時…
様々な歪みの中で人々は喘ぎ
悪あがきに明け暮れる
その光景をまるでカメラアイの様に
娘の視線が執拗に追いかける
自らすすんで渦中に
飛び込んでゆく
何度も何度も
危険な目に遭っても
決して怯むことなく
突き進んでゆく…
キナ臭さがそこら中に漂いはじめる…
一分のスキなく綺麗に着飾って
他人事(ひとごと)のように日々を過ごすか…?
いっぱいいっぱいの醜い姿を恥ずかし気もなく
晒して日々に唾を吐くか…?
周りで、敵味方入り乱れて
バタバタと死んでいっても
不思議とどんなにピンチに立っても
彼女は
ある時は自らの力で
ある時は他人が
救いの手を指し伸べてくれて
そのピンチを切り抜ける…
見なくてもいいものも
自らすすんで見た
まるで目の前で起きている物事の
共犯者のように
その行動は時に火に油を注いだ…
虚飾されたものの
奥に蠢くお決まりのグロテスク
何事も綺麗事のように
日常だけが絶対的に繰り返されてゆく
兄の遺した服を身につけ
兄の幻影となって
開かずの扉を
こじ開ける
現れたその幻影が
大暴動の
合図になる
人間のこれ位ならと云う甘い考えが
次第に寄せ集まって溢れ出してしまったら
もう誰にも止められない
その流れの先にあるのは
「まさか!」
「そんなばかな!」
の他人事(ひとごと)を
まる飲みにして…
火中に飛び込んで
ひとつの終わりを
冷静に見届ける…
ふりかえりみれば
焼け落ちてゆく両親の帽子店…
この光景を見る為に
ここに立っている…
人の命は羽飾りよりも軽く
戦争は正義の産物でしかなかった…
ふと
気がつくと
あなたは
冷たい雨にうたれて…
戦場の
塹壕の中に立っている…
戦場なのに
それっぽい音はしない…
あなたは
なんでいま
ここに立っているのか
わからない…
これからあなたが
見る
ことを
あなたは
どれだけ
想像できますか?
決まりきった
わかりやすい話や
キラキラした登場人物や
ド派手なアクションが
すべてのわけがない
わからづらいから
駄目とか
あまりに怠慢過ぎるように思う…
与えられることに
馴れきってしまった
じぶんは
あなたの目に
どう映る…?
映画の可能性は
そんなに薄っぺらではない…
難解な作品
難解な映画である。まず映像の殆どが主人公の顔の大映しなので、場所の把握が難しい。映像酔いしそうな感じさえある。そして映される主人公の顔にはあまり表情がなく、視線の先の光景が説明なしに映される。主人公の意図がどこにあるのか、常に不明である。
それでも鑑賞中にいくつかの情報を得ることができる。ハンガリーでは日本や朝鮮と同じように、苗字~名前の順で表すようだ。
主人公レイター・イリスは対人恐怖や対物恐怖といった感情とは無縁である。観客はまったく感情移入できないまま、先の読めないイリスの行動にどこまでもついていくことになる。イリスが唯一はっきりと意思表示をするのは、火事で亡くなった両親の遺した帽子店で働きたいということだけである。その両親には秘密があり、雇っている針子たちのひとりを不定期に権力者に差し出していたようだ。
兄レイター・カルマンは、両親の罪を背負う覚悟をして、犠牲になった針子たちの復讐をするかのように、貴族をはじめとする権力者にテロを仕掛ける。イリスの無表情で不気味な行動力はストーリーが進むに連れてエスカレートし、心の荒んだ馭者さえ言うことをきかせるほどになる。それは兄の跡を継ぐことに必要な資格のように思える。しかしそれがラストシーンに繋がったのかというと、確証はない。
製作者の意図は商業目的でないことだけは確かだが、何が描きたかったのかというと、はっきりしない。第一次世界大戦の前年の出来事として、火種の燻るブダペストと、導火線に火を付ける意志の持ち主の誕生前夜だろうか。
一回の鑑賞では断片的な情報を集めて再構成するまでには至らなかった。しかしもう一度観るにはかなりの忍耐力を要すると思われる。
see you later
逆行する帽子、投げかけるシューベルト、ギラつく眼光、固く閉ざされた唇。
面白いのは、何でもないシーンに緊迫感があり、大きな動乱にその弛緩がある事。
この空気感、未来の巨匠の風格。
時代の変化が静かに人々を呑み込む
物語は、第一次世界大戦の前、そして、最後のハプスブルク家が崩壊する直前の頃だ。
こうした歴史の大きな転換点の前夜には、なにかスペクタクルな物語や激情を期待しがちだが、これはイリスが、兄を探しながら見つめた時代の変化で、オーストリアに隷属するハンガリーの鬱屈とした雰囲気や、最後のハプスブルク家の退廃、女性をモノとして扱うような世情が、その時代の重苦しい雰囲気とともにスクリーンに映し出される。
決して明るい雰囲気など無いに等しかっただろう。
帽子店の30周年を祝う場面も、どこか炭酸の抜けたソーダのようで、参加している人々も気持ちがこもっているとはとても思えない。
こうした表現が示すように、退廃は密かに闇に深く根付き、それに対抗する変化も静かに、細心に、そして徐々に訪れるのではないか。
兄を探すイリスが、レジスタンスに身を投じる決心をしたエンディングの場面も、観る側のイマジネーションを試されてるかのように感じる。
抑圧された人々の権力に対抗する決意や、命を投げ出そうとする勇気も、悲壮感に満ちたものだったのだろう。
今、訪れるとウィーンも、ブダペストも美しく、歴史の重みも伝える。
映画のような暗澹とした雰囲気はない。
世界遺産にもなった人々から愛される都市が、ハプスブルク家が中心になって造った都市であることは歴史の皮肉でもある。
過去から何を学ぶのか、どのようなプロセスを経て、現在の自由を獲得したのか。
そして、今でも自由を希求して、抑圧された環境で闘っている人がいることを知っているのか。
きちんと向き合う時が来ているのではないか。
普段は読まないのだが、ある週刊誌の、この映画の映画評を読んでしまった。
監督は上から目線だとか、撮り方がどうだとか、色々書いてあったような気がする。
僕は伝えたいことがあるから、こうした作品に仕立てられたのではないかと考える。
評論で差別化するのはなかなか難しいとは思うが、例えば、映画における上から目線の撮り方とは、具体的にどんなことを指すのか、ちょっと聞いてみたくなった。
表と裏と
1913年ブダペストの創業30年の高級帽子店を部隊にした貴族と民衆のドロドロしたお話。
先代オーナーにして創業者の娘が今は人手に渡ったレイター帽子店の求人に応募するところから兄の存在を知り展開していくストーリー。
多くを語らない上に強情というよりも超絶自己中な主人公に共感は出来ないし、当時のハンガリーの情勢を知らず観賞したからというのも大いにあるのだろうけれど、直接みせずに想像させる部分が多過ぎる。
一人称視点はまだしもドアップ狭小視野の多用で情報は入り難い、人の視野はもっと広いですよ。
ものものしくしたいであろう空気感も詰め込み過ぎの内容にムダに長いマッタリ描写等テンポが悪くダルいだけだし、何となく言いたいことは伝わるけれど冗長過ぎる。
自分みたいなレベルの低い方の一般人でこれを面白いと絶賛出来る人はいるのだろうかと感じてしまう程、自分にはレベルが高く合わなかった。
不快で深い
監督らしい焦点のカメラワークと長回し。会話や音の出所のこだわり。多言語混在。主人公の行動の意味不明さに不快になるも、その気味悪さがどんどん面白くなった。現実か妄想か主人公はなんなのか。なかなかヘヴィで苦行。面白かった。
兄は「サウルの息子」
主人公周り視点のため、見えない、おぼつかない足元。
何処へ行きたいのか何をしたいのか分からない感覚が物語と相まって不安を煽る。
そして、「サウルに息子なんて…」…と同じモヤモヤ!
貴女は一体誰を……
歴史背景解説と自分勝手な解釈を書いた感想記事↓
https://www.cinemarev.net/entry/sunset.html
監督が作りたいから作った、意気込みを感じる作品です
商業的な映画に慣れすぎたせいか、こういう作り手の作品感の強い、一種観客を突き放した感じの映画を久しぶりに見ました。
背景の歴史・心情がとらえにくいのでどうしても難しいのですが、いっそ答えを求めず感じたままに受容すればよいと思います。
個人的には興味深くて面白かったです。
が、、、人に勧めるのは難しいです。
最近の派手でわかりやすいストーリーに慣れていると、昔のアーティスティックな映画に何が言いたいんだろう?と困惑するでしょう。おそらくそれに近いです。
監督が作りたいから作った、意気込みを感じる作品です。
考えるな感じろ!(笑)
2才で両親を亡くした主人公イリス
唯一遺された筈の有名帽子店は他の人のものに
両親の死の真相を探る為帽子店を訪れるイリス
待っていたのは兄が居る?という小さな手掛かりだけ
イリスは真実を知ることは出来るのか?
秘められた真実とは?
有名帽子店で働きながら女王の下で働きたいと夢見る女性たち
その陰で繰り広げられる怪しい男たちの謎の世界2つ
イリスが見た世界は真実なのか?幻なのか?
ミステリーなのに解決に向かうのかと思いきや
え?っと理解不能の展開に混乱収まらず
誰が誰なのか理解出来ないまま最後まで混乱の真っ只中!
主人公イリスの視点で描かれた世界
不協和音と共に流れる難解な展開の内容に始終混乱
帽子の美しさが混乱の中際立ちます
今の時代も見えている物事や聞こえているもの、何が真実なのかは判らないのかもしれない
兎に角140分覚悟して臨め!(笑) 難解なの不穏なの好物な人お薦めです!
是非ともにやりとしてください あれだ!ブルース・リーだよ Don’t think, feel.だよ
試写会@ユーロライブ
久々に観た「なぜ?の嵐」映画
カメラが主人公イリスの視界を憑依させる範囲からほぼ出なかったり、長回しや焦点深度のボカしの多用など、前作『サウルの息子』でも見られた監督独特の撮影手法が際立つ。
それらはすべて、舞台である20世紀初頭のオーストリア=ハンガリー帝国の混沌を表現。
あらすじも、イリスに何やら怪しげな人物が近づいては、何やら不可解な言葉を次々と投げかけていくので、観客をも混乱させる。
さんざん観客を煙に巻き続けた挙句に、最後の最後でもとことんまで「なぜ?の嵐」(by吉沢秋絵)を突き付ける。
はたしてイリスが体験した事は事実なのか?一体何が真実なのか?
「今の映画は全てを説明しようとする。私の映画は合理的に理解してほしい」という監督の言葉に象徴されるように、『山中傳奇』同様に、解釈は観客に委ねられる。
帽子店を軸としたあらすじゆえ、「帽子はおぞましい物を見ないようにするために存在する」という劇中の言葉が深い。
考えるな感じるんだ!
久しぶりに訳の分からない映画を観てしまった…。
終わった瞬間ポカーンとなったのは、私だけではないはず…。
この映画は解説がなかったら、かなり厳しい作品と成り果てていたでしょう。
解説してくださった大寺先生のお陰です。
ありがとうございました。
この映画はミステリーでありながらも、答えを見つけてはいけないという、なかなか難しいもののようで。
言うなれば、考えるな感じるんだ!
そんな感じの映画です。
19世紀から20世紀へと時代の流れが変化する中で、人々の考え方やライフスタイルも変化していくハンガリー帝国。
帽子屋で謎の失踪を遂げた兄を探すために、妹がその店で働くのですが、何かがおかしいと感じ始めます。
なにを隠しているのか、真実はどこにあるのか?
普通なら、その真相を解き明かしたくなるのが一般的なのでしょうが、この映画ではそんな考え無用…。
そこに答えなんてありません。
混乱と絶望が存在するだけ。
サンセット=日没であるように、この世界が落ちて行く終わりの時間を傍観者のごとくスクリーンから見守るだけ。
モヤモヤとした時を感じることこそ、この映画の見方と言えるのかもしれません。
要は考え方次第。
ハリウッド映画のような、大スペクタルな題材を映画化した作品を好むのならつまらないと思います。
ですが、芸術をこよなく愛する映画好きな人たちが見たら、この世界観に酔いしれてしまうことでしょう。
途中夢か現実かチグハグになってしまう部分があったのも、意図的な映し方だったみたいです。
長回しによって描き出されるイリスの表情からは、どんな気持ちをくみ取るべきなのか?
そこに答えを求めてはいけないのですから、なおのこと難しい…。
途中で入ってくるガヤの声が、彼女の声と重なって、もう何が何だか分からなくなってフェイドアウトするという。
これまでにない、新しい映画の世界を体感してしまった作品でした。
たまには、こんな映画も面白いかもしれませんね(笑)
『サウルの息子』の監督だからとちょっと期待してしまいましたが、全く違った見せ方の映画を作った監督の芸術性に感動しました!
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