「失ったすべて。ひとつだけ」ナイチンゲール MARさんの映画レビュー(感想・評価)
失ったすべて。ひとつだけ
イギリス植民地時代のオーストラリアにて、極悪将校とその部下にすべてを奪われた女囚の復讐の物語。
タスマニアは、イギリスでの犯罪者の流刑地となっていた。犯罪といっても、殺人等の凶悪なものでなくとも、ちょっとした盗みで送られた者も多い。主人公のクレアもそのうちの一人。
映画序盤はとにかく目を覆いたくなるような、重すぎる不幸な展開続き。程なくして復讐の旅に出るクレアが案内人として雇ったのは、白人たちに迫害され土地を追い出された原住民のビリー。
映画は、将校一行とクレア達の旅を交互に見せた展開がずっと続くが、女子供関係なく、当たり前のように失われていく多くの命に言葉が出ない。史実がどうかはわからないけど、少なくとも本作で登場する人物で、命で罪を償うべきものなど、将校とその部下くらいしかいないはずなのに。。
黒い鳥の場面等、意外にもファンタジックな展開もあったり、ビリーにも分け隔てなく接する白人老人の存在、それに涙するビリーの姿には、こちらもぐっときた。
クレアの失ったすべてと秤にかけることはできないけれど、個人的感情はなくとも、忌み嫌いあっていたクレアとビリーが、人種を超えて心を通わせたのはひとつの救いか。
気軽にはおススメできない、名作だった。
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