「イッヒ、イッヒ、イッヒ」ある画家の数奇な運命 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
イッヒ、イッヒ、イッヒ
クルトの叔母エリザベトと後に恋人となるエリーはそんなに似ていたのかな?てっきり同じ女優が演ずるものだと思っていたけど、2人ともすごい(色んな意味で)。義母がケイト・ブランシェット似、エリーがリヴ・タイラーといった雰囲気。
東ドイツの美術学校で学ぶまでの波乱の人生。木の上で悟りを開いたり、叔母が断種手術という不運な人生を歩み、ナチスによる安楽死プログラムの理不尽さを訴えてくる。クルト自身は知らない事実だったが、やがて義父となる元ナチ高官ゼーバント氏がその施策に関わっていたのだ。ユダヤ人政策以外にもこうした事実があったことも忘れてはならない!と、強く訴えてきている前半部分。
後半は社会主義リアリズムの画風を学び、壁画を描くまで才能を発揮するが、父の不遇の死やエリーとともに西ドイツでの現代アートに圧倒される様子が描かれる。そして自分オリジナルの写真模写というジャンルを確立するに至るのだ。
3時間超はさすがにつらい。前半で印象に残ったことが終わる頃には忘れてしまうほど。日本でも旧優生保護法のもとに障碍者の強制不妊手術が行われたことも忘れてはならないが、どことなくドイツの状況と似ている気がした。この政策に毒されたゼーバントはロシア将校の保護によってまたしても危険な発想を娘エリーにも施してしまうのだ。もう、ロシア将校の気持ちさえも踏みにじってる!
スターリンの絵や労働者の団結の姿ばかり描いていた写実主義絵画。このまま自分を押し殺したような画風のままで進んでいいのか?絵画は死んだ?現代アートをやれと言われるも、スランプ続きのクルトの苦悩。安楽死政策については知らされぬまま、自分を表現したスタイルに新たな道を見出すところは本当に幸せかどうかは伝わってこなかったけど、まさに“数奇”という言葉がぴったりの波乱万丈な人生を見せてもらいました。
エリーの母親、私もケイト・ブランシェットかも、かな、からずっと離れられませんでした!おばさまとエリー、あんまり似てない。でも、エリー、どんどん綺麗になっていきました!