劇場公開日 2020年10月2日

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「爆音に曝される爽快感」ある画家の数奇な運命 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5爆音に曝される爽快感

2020年12月13日
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鑑賞方法:映画館

アドレナリン分泌で運動した直後に似た爽快感、みたいなもんがあると思われ。
良い映画だけど刺さらない土曜日、今日は虫の居所が悪いと見えて。

「子供世代が親世代の戦争の罪を暴く系」じゃ無かった点が良かったところ。西ドイツで芸術家として成功の道を歩み始める件が、感動には程遠かったのが残念なところ。189分が長かった。

ナチス政権下では、ドイツ人民であろうとも粛清の対象になっていた事。ドイツ本土への連合軍による空襲の中には、無差別攻撃(ハンブルク等)があった事。この辺が描かれていたのが良かった。

調べてみたら、ゲルハルト・リヒターのUncle Rudiは1965年の、48 Portraitsが1972年、1024 Coloursが1973年、Emaは1992年。初期はWWⅡの影が色濃ゆく、72年くらいまで引きずってる感じでした。

壁ができる前までは、その気になれば西側へ脱出するのも容易であったと言う描写は、「僕たちは希望と言う名の列車に乗った」でも同じでした。戦後20年ほどは、ナチスに抑圧された反動から、社会主義社会に異を唱える者は少数派だったって事なんかねぇ。それが崩壊を始めるのはソ連の侵攻に対するレジスタンスが活発化した頃。対策がベルリンの壁。

東西分断後、命がけで亡命して来た訳でも無く。芸術家を目指す貧乏画学生としての赤貧感にも乏しく。「自分自身とは何か?」の苦悩も、迫りくる何かがあるでなく。目をそらさないで、って言われても。目をそらしたくなる特別な何かが、彼自身の身に降りかかって来るでもなく。淡々と眺めてしまいました。

マーティン・エデンに続いて、自叙伝2連発で合計315分。疲れた。と言うか、ダレた。内面描写に、もっと時間を使ってもいいんじゃないでしょうか、って思いました。

bloodtrail