劇場公開日 2020年10月2日

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「芸術とは、自分の中から生まれるもの」ある画家の数奇な運命 七星 亜李さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5芸術とは、自分の中から生まれるもの

2020年10月19日
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鑑賞方法:映画館

正直、ゲルハルト・リヒターを知らなかったし、彼の作品も今まで見た事がなかった。
映画を見終わった後、ネットで、リヒターの作品を貪るように検索。
ちょうど、ポーラ美術館が彼の作品を35億?で買ったことや豊島に彼の作品があることを知り、急にリヒターファンになる。

映画を見て知った事は、なんとなくは知っていたけれど、ナチスが優生思想によって、ユダヤ人だけではなく、ドイツ人もガス室へ送っていたということ。
そして、戦争が終わってからの東ドイツでの暮らし。ソ連にほぼ支配された状態の社会主義国家。
彼の数奇な運命をたどりながら、何が優れていて、何が劣っているのか、それを決めているのは誰なのかを考えさせられる。

彼が、西ドイツへ行ってから、ヨーゼフボイスをモデルにした教授に見出される。
その教授から、芸術とは自分が体験したことからしか生まれないというようなことを言われて、自分の作品に改めて向き合う。

写真が出来るまでの絵画は、芸術ではあるけれど、写真のようにリアルにそのものを描くことが必要だったと思う。
しかし、写真、そして、映像が出来てからは、絵画とか、芸術は、何かを表現するものになった。
何かを表現するということは、奇抜なものだったり、驚かせるものではない。
確かに現代アートの中には、伝わりにくく、理解に苦しむものもある。

でもそのアートに何かを表現したいと思う作者の魂が入っていれば、作品は生きてくる。
ものを作るということ、表現するということが、その人の感受性全てであるように
感じるということが出来る能力は、何かを生み出す力を持っているということ。

叔母のエリザベトは、人よりも感受性が強いだけで、それは彼女の個性であり、能力だったかもしれない。
ADHDやHSPも同じこと。感じやすいからこそ、生きにくいけど、感じる力があるから何かを生み出すことが出来ると思う。
この映画を観て感じたことは、「目を逸らさないで見て。真実は全て美しい。」という言葉、そして、それを感じる心をなくしてはいけないと強く思う。

七星 亜李