「覚醒の瞬間」ある画家の数奇な運命 ぷにゃぷにゃさんの映画レビュー(感想・評価)
覚醒の瞬間
ゲルハルト・リヒターは2005年の川村美術館での個展を見て以来、好きなアーティストである。展覧会図録も買ったが、この映画のために見返しても叔母のことは経歴にも書いてないし、作品解説にも触れられてはいない。特に東ドイツにいた頃のことはほとんど情報がない。なので画家の過去は初めて知った。が、映画化にあたって、リアルとフィクションは曖昧にされている。
主人公に関わることは事実とは限らないのだが、ナチスの思想や、価値観は実際のものだし、戦後の街の様子などはなかなかリアルだった。生まれる時代は自分で選べるわけではないから、「合わない」場合は悲劇。ナチスに対して同調できないのに、仕方なく迎合したクルトの父も、戦後は冷遇され、時代に振り回された。ドイツの抱えるトラウマは相当なものだろう。
東ドイツから脱出したのは、クルトの芸術家人生にとって、大きなプラスである。自由な表現ができるようになり、だからこそあれこれ試して、模索を繰り返す。けっこうキツいだろうな、自分探し。でも、決して妥協しないからこそ、ようやく糸口がつかめた。これが自分の表現だ!と確信できた瞬間を見られて、なんか自分まで嬉しくなった。そして、ヨーゼフ・ボイスをモデルにした教授、いいわ〜。胸にウサギの毛らしきものを付けていて、萌えた〜。
エリーの父は、要領よく生きているつもりだが、やはり因果は巡ってくる。何も知らないはずのクルトによって、その因果が一枚の絵に収まるのは皮肉だ。エリザベト・マイは無残な最期だったけど、クルトの絵の中で彼女は生きている。そして、エリーも父の犠牲にならずに済んで、本当に良かった。映画では描かれないが、この先、クルトとエリーが真実を知る日が、おそらく来てしまうんだろうな…。
疑問点がふたつ。ひとつはクルトの母。夫は自殺して、兄弟も戦死、妹も強制収容、頼れるのはクルトだけなんじゃ…? 東に残したままなの? そこ放置していいのかーい。ふたつめはエリーの母。家族の秘密を知ってても知らないふり。実の娘の中絶手術を黙って見てるだけ? 何を考えて生きているのだろうか。あまりにもこの2人はぞんざいな扱いで、ベッドシーンをもう少し減らして、何カットか加えればよかったのに、と思う。
物語終盤、個展の場でリヒターの初期作品がたくさん出てきて、思わず前のめりになってしまった。また日本で大規模展を企画して欲しい。
返信ありがとうございます。
リヒターさんは最初の奥さんに気を使ってらしたのですか。
優しい方ですね。お子さんもいるようでしたものね。
絵も時代と共に変わりますものね。90年生きれば奥さんも3人、
わかるような気がします。
似鳥美術館はもうお調べになったかと思いますが、家具のニトリの会長の似鳥さんの全て私蔵品のコレクション。
多分20億とか30億とかの所蔵品だと思います。
日本画が充実していました。
私は札幌市なので2回行ってます。
警備が緩くて殆ど監視されないところが、リラックス出来ました。
私はもう映画館へも殆ど行ってないのです。
家事もありますしそんなに時間がないのと、交通機関を乗り継ぐのが、
面倒になってしまいました。
だから映画.comの精神には反していると思っていますが、
映画は好きで沢山みたいです。
ぷにゃぷにゃさんはアートに詳しくてらして、一朝一夕では
あんな深いレビューは書けないと思います。
いつもありがとうございます。
共感そして丁寧なコメントをありがとうございます。
ヨーゼス・ボイスさん。
ちょこっと調べてみると本当にソフト帽子を被った写真のご本人でした。
環境問題も自然破壊に抗議してらしたのですね。
都市の緑化、700本の樫の木運動も出ていました。
展覧会もすっかりご無沙汰しています。
直近でみたのが小樽市の似鳥美術館です。
教科書に載るような日本と世界の誰もが知っている画家の作品でした。
フットワークが軽くなくてすっかり出無精です。
でもできれば本物に触れてみたいですね。
ぷにゃぷにゃさんのレビュータイトルの「覚醒の瞬間」
ヨーゼスさんと出会ったことで、真に描きたいものを知ったのが、
「覚醒の瞬間」ですものね。
監督はリヒターさんに長時間取材して、ほぼ映画の東ドイツ時代の事は
事実だとありました。
でもそれをあからさまにしないこと、が条件だったとか。
触れてほしくない痛みを伴う事実なのでしょうね。
ヨーゼス・ボイスさんのフェルトと脂肪のアート。
映画では壁に塗っていましたが、実物を是非みたいです。
ヨーゼスさんのドキュメンタリー映画もあるようでした。
絵画特に現代アートに触れる機会など少ない生活ですが、
西ドイツの美術大学の熱気と自由な雰囲気。
日本とは違って新鮮でした。
アートに触れた時間。
ぷにゃぷにゃさん、本当にありがとうございました。
こんにちは
お邪魔します。
リヒターさんもヨーゼス・ボイスも知らずの、アート、特に現代アートは
ほとんど無知です。
ぷにやぷにゃさんのレビューには教えられました。
ありがとうございます。
わからないけれど、
でもとても引き込まれました。
ヨーゼスさんをモデルにした教授は私も“燃え“・・・です。
第一回個展の作品。
本物だったんですか?
模写なんて世界じゃないですよね。
アートですものね。
美男美女祭りで、眼にも御馳走な映画で、多少の誇張(リヒターさんは、何を大袈裟な・・・と激怒したとか、Wikipediaに書いてありました)
シアマ監督の音楽の使い方、特別で面白い、あといい俳優というか子どもをよくオーディションなりで見つけるなあ、すごいなあと思いました。トムボーイでもそうでした。
ぷにゃぷにゃさん、コメントありがとうございます。リヒター展はビルケナウそのものとその場所にあったでかい鏡がすごく強かったです。それから8枚のガラス、グレーの塊の絵。見ると見られるを凄く意識しました。
ぷにゃぷにゃさん、やっと見ることができました。ボイスの帽子、フェルトに萌えました!大満足だから大丈夫!と思ってましたが、映画終わって立ち上がるとき、かなりふらつきました。
kossyさん
コメントありがとうございます♪
リヒターもご高齢なので、生きてる間に個展できるかなぁ…。
金沢21世紀美術館で企画して欲しいですね!
私も眠気は感じませんでした。ただ、終わって立ち上がる時に、ちょっとふらつきました〜笑。
ぷにゃぷにゃさん、コメントありがとうございます!
リヒターの個展も鑑賞してみたくなりますよね~
3時間という長尺にもかかわらず、眠気を全く感じなかった。それほど情報量がいっぱいだったみたい。