「ROMAの愛の物語」ROMA ローマ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
ROMAの愛の物語
既に、言い尽くされてることかもしれないが、ROMA地区に住むクレオと、ソフィアの家族のAMOR(愛してる)の物語だ。
社会情勢が緊迫化する中で、彼らは必死に前向きに生きようとする。
この時期のメキシコは大きく揺れていた。
68年のメキシコシティ オリンピックは光の部分だが、前後に大きな民衆弾圧の事件が2度発生し、多くの市民が殺害されている。
イデオロギーというより、白人が先住民を支配し、社会に不満が溜まりに溜まっていたためだろう。
そのような情勢下で、ソフィアの夫は家を出て、家族の元には戻らず、クレオは反政府運動を行うフェルミンの子供を妊娠してしまう。
クレオの子供は死産だったが…、
クレオは、ずっと、その子は「生まれてこなければ良い」と願っていたために、罪悪感や後悔の念に苛まれることになる。
メキシコは、多くの市民が敬虔なカトリック教徒で、そんな背景も、クレオの罪悪感を助長したのではないだろうか。
そして、皆で出かけた旅先の海で、クレオは泳げないにもかかわらず、高波にさらわれて溺れかけたソフィアの子供二人を必死に助け出す。
自分の子供を失ったことへの、贖罪のような気持ちもあったのだろうか。
その直後、正直に後悔の気持ちを話し始めたクレオを、ソフィアの家族は優しく、強く抱きしめ、皆の関係は更に深まっていく。
エンディングでは、高地で乾いた気候には特有の、天高い空が広がり、希望を感じさせる。
深読みしすぎかもしれないが、ROMAには、カトリックの権威でもあるバチカンがある。
一方、遠く離れたメキシコシティのROMAには、こうした助け合う家族の物語があったのだ。
人々を育み救うのは、権威や、宗教やイデオロギーではなく、助け合ったり、励ましあったりする人々の「愛」なのだということもメッセージとして内包してるのではないだろうか。
そんな事も感じさせる物語だった。