「静かな緊張感の美しさ」ROMA ローマ ウマノホネさんの映画レビュー(感想・評価)
静かな緊張感の美しさ
昨年度(第91回)アカデミー賞受賞作品としても、
映画館ではなくインターネット配信の作品としても、話題となった作品。
わたしは映画館で鑑賞。
映画館では、例えば上空を横切る飛行機の轟音や、町の雑踏など、
音の臨場感を存分に体感することができました。
劇中でドアを開けた音が聞こえて、
思わず映画館内の出入口に振り返ってしまった(笑)!
音もそうですが、
色を排したモノクロ映像の中で、
前景と後景がハッキリとした立体感を描き出しています。
例えば、遠くに見える森の火事や、
ベビーベッドを買いにきた店の外の様子と中からの映像、など。
見間違いかもしれませんが、
部屋に飾られていたのが "光の魔術師" ともいわれるフェルメールの絵?
白黒でありながら、この映画の光の見せ方とも重なるようにも思えます。
対比的なのは(前景と背景、光の濃淡と白黒の)他にも、
劇中に何度も登場する飛行機。
その下で暮らす地上の市井の人々を対照的に際だたせているのかな、と。
また、家政婦のクレオら(あえて一括りに)家族が暮らす家の全体をうつすカメラの動きは、
まるで演劇を見るときの視線のように感じました。
(演劇の舞台は、部屋の一辺の壁を取り除いたように作られる)
1970年代メキシコの社会、時代の激動の中で、
社会の最小単位とも言われる "家族" のあり方が、比例するように揺らいでいく様子、
何事もないような生活の中での不吉な予感と変化、
その微妙な緊張感が繊細で美しく映し出されます。
一つの小さな集団の変化、だけではなく、
クレオ自身の一人の女性としての吐露、
「欲しくなかった」
という台詞が、
おとなしくも切実な言葉として、胸の一番奥までじんと響きます。
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