「喜びや悲しみを超えて、寄せては返す波のように紡がれゆく記憶たち」ROMA ローマ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
喜びや悲しみを超えて、寄せては返す波のように紡がれゆく記憶たち
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映像の深度。ふとそんな言葉が浮かんだ。映画館のスクリーンに比べるとこれっぽっちのサイズでしかないPC画面(NETFLIX)での鑑賞ではあるものの、計算され尽くした構図とカメラの動きが、観る者を深い記憶の潜行へといざなってやまない。しかもその全ての演出がいっさいこれ見よがしではなく、カメラの存在を忘れてしまいそうなほど、ナチュラルに胸に沁み渡っていく。物語そのものはとても小さくて個人的なものだが、そこに映し出される延々と横移動し続ける街並みや、遠く遠くまで開けて見える奥行きなど、このPCの小箱が一つの考え抜かれた視座、あるいは「記憶の覗き穴」でもあるかのようだ。
寄せては返す波のようなオープニングは、やがて訪れる生命の鼓動、陣痛、そして終盤の海辺にもつながる。何気ない喜びや悲しみ、そして歴史が物語る惨劇を乗り越えて、日々が大切に、穏やかに育まれていく様がこの一作に集約されているかのようだ。
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