配信開始日 2018年11月6日

「DEAD OR ALIVE」バスターのバラード かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0DEAD OR ALIVE

2019年12月14日
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遊び半分で書いた表題作に同じテーマの短篇を数本くっつければ1本の長篇映画になるのではないか。Netflix配信の本作ははなっからドラマ化する計画はなかったそう。劇場公開しなかった理由として、短篇アンソロジーのマーケットが存在しないこと、悪意ある大衆の前にさらしたくなかったことをあげていたコーエン兄弟だが、本当のところはどうだか。ネット配信作品の場合映画を見たという人の数が絶対的に少なく、感想を書く手もつい鈍りがち。しかし、一連のコーエン作品の中では最もライトな部類に属する本作は、肩の力を抜いて楽しむのにはうってつけの1本だ。

The Ballad of Buster Scruggs
ギター片手に自慢のバリトンを響かせりゃ、降りかかる“死”だってやりすごせるさ。全身白ずくめの陽気なお尋ね者バスタ―・スクラッグス(ティム・ブレイク・ネルソン)。まさか自分を悼むバラードをデュエットするハメになるとはね。

Near Algodones
襲ってくださいといわんばかりの場所に立っている銀行に押し込み強盗をしかけたカウ・ボーイ(ジェームズ・フランコ)だが、老いた武装銀行員の思わぬ反撃にあいあえなく御用。それでも絞首刑寸前にこれまた思わぬ助けが入り「ラッキー」と思った矢先…二度あることは三度ない!?アーメン。

Meal Ticket
四肢の無い若者が移動式舞台で吟じるのは『オシマンディアス』『カインとアベル』『ゲティスバーグ演説』…そんな慈悲深き興行も時の流れと共に廃れていく。所詮は飯にありつくための手段にすぎなかった若者の命は、計算ができるニワトリのそれより軽かった。慈悲が永久だなんて誰が決めた?無料食事券にも使用期限ってもんがちゃんとあるだろ。ニヤリと笑った時のリーアム兄さんの歯、汚かったねぇ。

All Gold Canyon
ほどほどの欲は善なり。神が造形したかのように美しい谷に金鉱を求めて穴を掘り続ける老人(トム・ウェイツ)とロバくん。そんな老人の後をつける黒い影。金鉱を見つけた途端、あっけなく背後から撃たれて金塊を横取りされる老人…ところがどっこい。人体の急所を外された老人が大地の急所(金鉱)を掘り当てたのである。

The Gal Who Got Rattled
兄をコレラで失ったアリス(ゾーイ・カザン)を救ったのは幌馬車隊のサブリーダー、ナップ。「見て触れるものの確実性はほとんどが理にかなっていない」コーエン・ムービーの一貫したテーマを劇中語るナップから求婚されたのだ。しかし隊のリーダー、アーサーによる捨て身の演技を早とちりした信心深いアリスは…この時だけは優柔不断ではなかったのだ。

The Mortal Remains
2人の死神に導かれあの世にむかう駅馬車に乗り合わせた3人。人の根本は全て同じだと主張する猟師、潔白と罪人に分かれると信じる教授夫人、それを人生ありのまま受け入れるべきと皮肉る賭博師。車内で言い争いとなった3人を前に死神の一人がこんなことを口走る。「あの世へ着くまで(俺たちの撮った映画)の理解に苦しむ。その時に見せる彼ら(観客)の目が好きだ」と。この2人の死神こそまさにジョエル&イーサンの分身だったのかもしれない。

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かなり悪いオヤジ