この世界の(さらにいくつもの)片隅にのレビュー・感想・評価
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径子を通じて思うこと
「この世界の片隅に」はDVDで観ました。そしてこの作品は劇場で。映画はやはり劇場が一番ですね。世界観にどっぷり浸かれます。
おっとりとした性格のすずを通して、その対極にあると言っていい戦争の存在が強烈に胸を痛くします。「戦争はダメです」‥このことを語り継ぐために必要な作品。そう思いました。
どんな時代にあっても、その中で繰り広げられるそれぞれの人生。時代のせいにすることもできる、人のせいにもできる。しかし、僕はこの過酷な状況で語られた径子の言葉が強く残りました。
「自分が選んだ道の果て」
恋をして、結婚をして、戦争が起きて、疎開して、離縁して息子を手放し、かけがえのない晴美を失っても「自分が選んだ道の果て」と言える彼女の強さに打たれました。そして、それだけに日本の敗戦を知った時に人知れず晴美の名を呼んで泣いていた姿が愛おしくさえ思えたのでした。
僕らは彼女に学ばなければならないと思います。「自分の選んだ道の果て」と言えるように。時代がどうであろうとも自分の人生を生きることの大切さを教えてくれたように思います。
径子の存在もまたすずの性格と反対側にあるものだと思いますが、戦争を通じてお互いの痛みを知りながら歩み寄っていく光景もまた印象的でした。
戦争が終わり、新しい家族が増えた北条家の幸せを祈らずにはいられませんでした。
素晴らしかった
前のバージョンで、2回見ていてそれで充分だったし、長いからあまり見たくなかったのだけど、見たら素晴らしくて、特に前はエンドロールだけだった浮浪児を引き取るところが、場面で描かれていて涙が止まらない。家族のみんなが、特にお姉さんがあの子によって救われると思うと本当に素晴らしい里親映画展開。
座敷童が浮浪児で、のちに女郎になってすずの旦那さんが水揚げしようとして、やめて、すずが偶然知り合うのはちょっと出来すぎではなかろうか。
はるみちゃんが亡くなるところは何度見てもつらい。
見ていて長さはあまり気にならなかったのだけど、それでもやっぱり長いは長い。一日のけっこうな部分が終わってしまう。
オリジナル版の方が良かった!!
オリジナル版を観て旦那の愛情と印象が薄いと感じました。今回、旦那に関するエピソードが追加されて、元々薄かった旦那の印象が悪くなってしまったと感じました。また終盤にまだ主人公がリンさんリンさん呟いているので、晴美ちゃんの印象まで薄くなって、全体的にボヤけてしまったと思います。旦那から愛情溢れる一言があったり、ラストが幼馴染エンドになる等何か変わる訳ではないですし、追加部分は蛇足だったと思います。観賞後は不快な気持ちです。オリジナル版の制作で、この構成で行こうと初めに監督がバッサリ決断したものが、文字通りの英断で間違いなかったのだと思います。すずさんは健気で可愛く、山の上から軍港を眺めるのは変わらず良かったですし、空襲が来る度に怖くて悔しくて泣けました。片渕監督が自分の名前と似ている「片隅」に魂を込めるのはとても分かりますが、同じ作者の「夕凪の街 桜の国」を劇場アニメにして欲しかったです。
戦争に対する憎しみで腸が煮えくり返りそう
通常版も観ていたので前半は退屈半分、懐かしさ半分、と云った感じ。
中盤のリンさんの追加のくだりは、それほど必要性を感じなかった。エンディングのクラファンサンクスの部分だけでも充分だったので、蛇足感がある。
そして、不発弾以降は悲しみと怒りと憎しみで感情が飽和して良くも悪くもキツくてキツくて仕方が無かった。
観終わってからも、感情が昂りっぱなしで叫んででもアウトプットしたいくらいだった。
一人で観に行くんじゃなかった。
追加シーンにやや蛇足感あり
元々が超ハイクオリティな作品である上、追加シーンも全く手を抜かず作られており、良く出来た作品なのは間違いないのですが…
リンと習作の関係はあまりにも出来すぎていて、本作全体のリアリティとのバランスが悪かった気がします。ここだけあまりに創作物っぽ過ぎるというか。
もちろん本作自体、別にドキュメンタリーではありませんし、元々バケモノなどのファンタジックな要素もあるにはありましたが、前作ではその辺は本当にふんわりしたレベルに留まっていて、そのバランスが絶妙でした。追加シーンによってせっかくのバランスが崩れたように個人的には感じました。
このシーンや濡れ場があるからこそ生まれたリアリティ(主にすずの人間らしさ)もありますし、追加キャラのテルは遊郭の苦しみをよく表していました。
ので、追加シーンを一概に駄目とは言いがたいのですが、一本の映画として見た場合、どうしても冗長さを感じざるを得ません。
他の人に薦める場合、個人的には前作を選ぶかな、と。
リンとテルちゃんの言葉
前作では予算的に無理ということでカットさらた場面が加わり、戦争の悲しさだけでなく、当時の貧困の酷さ、女性の苦しみ、がより理解できました。リンとすずが子どもを生むことについて話し合う場面で、リンが「男の子でなくても女でも売れるからいい」と言ったのにはショックを受けました。どれだけ過酷な生い立ちだったのかと。「小学校は半年しか行かなかったからカタカナは読めるけど平仮名はわからない」という言葉にも泣きました。テルちゃんも風邪を引いても病院には行かせてもらえなかったから死んだのでしょう。
当時の日本には何百何千の単位でリンやテル、すずやヨーコが居たと思います。物語自体はフィクションですが描かれる事柄の多くは事実と思います。まさに さらにいくつもの片隅に です。
「ここに居らして貰ってよかですか?」
前作に新カットを追加され、より原作に寄り添った内容になっている作品である。ネットで調べると原作にも無い独自の視点も織込まれていて、片淵監督の力の入り様がヒシヒシと感じられる渾身の一作である。それは単にリメイクしたというよりも、前作との伝えたいベクトルの違いを見事に表現されていて、同じストーリー展開なのに印象を角度の変化付けすることにより、印象や拡がる感情をより多層的に複雑化したリアリティを落とし込むことに成功した構成なのである。
実は、今作品を鑑賞する前に心に重石が乗っかかったような暗い気持が支配していた。それは、義姉からの慟哭と同一の罵倒シーン。あのアニメキャラ及び画の世界観との激しいギャップから繰広げられる不条理な出来事を又目に映さなければならないのかと暗澹な心持ちだったのである。ストーリーが進んでいき、確かに加えられたシーンや、特に『りん』のキャラクターの広がりのある展開は前作にない、アダルティで艶を混ぜた“文学”としての要素をグッとサルベージさせた展開で、より奥行きさを増した物語により傾倒していく自分を自覚できる。短いカットだが、夫婦のベッドシーンがあったりとその辺りのリアリズムを追求している覚悟も又深みのある演出に新鮮さを得る。前作でのボカした解釈(主に周作とりんとの関係性)もキチンと説明されていて、逆にこの辺りが趣向の分れるポイントかと思うが、丁寧な仕上げとしての好感を抱かせてくれる。しかしそれよりもその説明シーンを描く事で、主人公の多角的心情の表現を演出できたことが今作のキモなのではと強く感じる。周作の心情ははっきりとは表現していないが、この三角関係の深淵を想像する或る意味手がかりを提示することで、物語の奥深さをより一層構築できた作りなのである。
そして、問題のクライマックス・・・。あの胸を掻き毟るような不条理は、唯々登場人物達への同情に心が支配されてしまい、揺さぶられることしきりである。そうなったらもう作品への没入感が100%越えになってしまうのは避けられず、そこからのかなとこ雲と原爆雲との前後半の対峙の演出の見事さや、悲痛や困難さの負の感情を鮮やかに転換させる展開に、唯々滂沱の涙以外に心のダムを決壊させる感情を表現出来ないカタルシスの到来である。勿論、前作と同様、広島で拾った女の子のストーリーも相も変わらず感涙なのだが、今作はスタッフロール中のりんの物語も又、卑怯だと叫ぶほどのトドメの涙を止めることが出来なかった。正直に真面目に暮らしを営む。勿論、そこには嘘もあり、隠しておきたい真実もある。綻びに人は傷つき、そして途方に暮れる。しかしそれでも毎日は続く。戦争だけでなく、自然災害も“台風”という理不尽な力で苦しめられる。でも人間はそれを上手く手懐けるアイデアも持ち併せている事実を、今作品はメッセージとして発信している。アニメーションという手法を取ったその着想に又、敬服させられる作品なのである。でも、幸せな人生を、一部の恣意で犯してはならない、その想いだけは決して忘れないように胸に刻むのである。パーフェクトな作品、感謝である。
ほろ苦さとリンさんの優しさ
前作ではあえて省いたリンさんとのエピソードを盛り込んだ3時間の大作。ノーカット版は得てして冗長になりがちだけど、この作品は全く長さを感じさせない。それどころか、前作を繰り返し観たマニアで、ストーリー展開を熟知している層にも全く新しいテーマを提示してくれる。
リンさんと周作さんの再会シーンも描かれていたけど、その場面も含め、りんさんはすずさんに対して、一切周作さんとの関係を匂わせるそぶりもみせていない。知らん顔されたら嫌じゃろう、と述べたシーンに秘められたのだろうか。
プロフェッショナルに徹したその態度があればこそ、すずさんも周作への嫉妬心を消すことができたんだろう。原作では中巻44ページで示されたような、リンさんの心理描写を示すシーンは気づかなかった。
原爆投下後髪を切ったシーンや終戦の時の場面だけでは唐突だったけど、リンさんのエピソードが入ると、単にぼーっとしたキャラに思えた前作のすずさんの、実はうちに秘めた強さが説得的に伝わる。
代用品のことを考え過ぎたシーンは原作以上に描写がアダルトで、それも本作のほろ苦さを際立たせているなと。
原作に寄り添いながらさらに踏み込んだ傑作でした。
心の底の秘密
深みが更に増し
素晴らしい映画でした。
ますます すずさんが大好きになりました。
艶っぽいところもあるよね。
なんでか知らんけど
途中からずっと泣きっぱなし。
不思議と『手』のぬくもりを感じました。
2020.1.3 二回目鑑賞。
グッとこみ上げてくる
人の人生、色々あって当たり前ですけぇ。
常に笑顔の人に限って心の中では泣いてたりするもんですけぇ。
この大きな世界の中の、こんなちっぽけなほんの片隅に、生まれ、育ち、出逢い、別れ、泣き、笑い、怒り、そして、ホッと一息つける。
そんな空間を大切にしたい、と思いました。
全体的に良かった
3年前原作が好きで映画館で観てきました、あの時はカットシーンが多くて爆撃で紅入れが壊れるシーンはちょっと説明不足だと思っていました。今回はしっかりと描いていましたしお色気シーンも原作にはありませんがすみちゃんのセミヌードっぽいシーンがありました。あと営みシーンは原作よりいやらしかったですね。それと桜のシーンは良かったですし原作にはない周作さんとリンさんが会う所も少しありました。まだ細かい所は抜けていましたがね。全体的には新作を観ているような気分でした。
待望の完全版・・・だが、極限まで切り詰めた前作も良し
ほぼほぼ良かったとは思うのだが・・・
(足りないパズルのピースが埋まったとは思うが)
第1作が極限まで切り詰められていたのに対し、追加部分のなかで、やや気になる点が。
以下気になった点
1.水原に唯一の鉛筆をなくされた後の件、原作では他の男子が絡む部分は、なかったはず。
今どきの子供じゃないんだし(水原をより凶暴に見せるため?)。
そのくせ、先生が鉛筆を借してくれるシーンがない。
2.小松菜の件、径子が帰る経緯のために入れたのだろうが、その後の小松菜が出てこないので尻切れトンボの感が。
あと、原作通りにクドクド言わせるのもどうなのだろうか。後の早回し説教の件から見ると蛇足に思えた。
3.リンドウ柄の茶碗の件は原作通りのほうが良かったような?
小林夫妻が家であれこれ言っている件は小説版には載っていたかと思うが、原作には、ないのに追加する必要があるものだろうか。
4.竹やり訓練の件、長物危険!な、すずが出てくるのは、隣組のところだけなので、ちょっと説得力に乏しいような。
その前の竹やり用の竹の採取?のところで、リンの身分証とノートの切り欠きが判明するところをすずの手ぶりで表現していたが、あれこそ原作通り、すずのモノローグで良かったような。
5.桜見物の件、リンに海軍事情を語らせるのはどうしたものかと。
山本長官さえも愛人に軍事機密を話していた、あるいは兵士に対して厳罰化する一方、海軍将校の汽車内でのおしゃべりでも軍事事情が分かったと言うような話も聞くので、あるいはそれを表現したものか。
理詰めで見ると、おぉ完璧!なのだが、前作でも(エンドロールを含めて)脳内補完や想像で埋められた部分に細かい説明をされるのもどうかな?とも思う。
一番の衝撃は夜の営みか?
(まさか入るとは・・・原作よりなまめかしい)
説明しすぎなのが残念
原作もそうですが、通常版も、細かいところをあえて言葉で説明しないですよね。人物がその場であったことをそのまんま喋るからいい。だから原作は何度も読み返しては新たな発見があるし、通常版も、原作を読んでから見ると、カットされた出来事もちゃんとあったことなんだ、とわかるわけです。
というところで、原作屈指の名場面であるりんどうの花の秘密に気づいてしまうところ〜周作さんの過去が明かされるところですが、ちょっとつまらなかったなぁと。あれは観客も一緒に気づいて、すずさんと一緒に固唾を飲みながら帳面を見つけなくてはならない。(原作では帳面は紙の特徴がわかりやすく、表紙を見たときにあの紙とわかるのです)
周作さんがすずさんを嫁に迎えた理由も明かされましたが、想像通りでした。ということは原作のセリフのないコマだけで全て説明されていたわけで、それを急に説明口調で言う必要はないよなあと。
周作さんとリンさんの再会シーンも何故セリフを入れたんでしょう。すずさんからは見えないし聞こえないはずです。(気づきながらも見ようともしないシーンだから)
通常版でのポリシーであった、すずさんの知らない事は描かれない というお約束が破られており、内容が大人っぽくなったのに説明は子供向けか?とガッカリです。
と言う文句も期待値が高すぎたからで、そのあたりが原作準拠の丁寧なつくりだったらもう5点満点じゃ足りないくらいの点だと思います。
いい意味でも悪い意味でも、100点!
冒頭5分で涙が出てきた。
3年前に前作を観た時の、何とも言えない感動がドバーッとよみがえって、涙が止まらない。
小学校の場面で、水原哲との追加シーンが。
なくてもいいけど、あるとないとでは、後々のエピソードの深みが違う。
リンさんやテルちゃんのシーンもそう。
より原作に近くなっている。
が、満足できたかというと、正直微妙。
前作が100点だとすると、本作も100点です。
120点ではなかった。
追加シーンの全てが、期待の範囲内で、新たな驚きや感動は少なかった。
過剰に期待してしまったからかも。
とはいっても、100満点中100点の作品であることは間違いない。
初見の方には自信をもってお薦めできる。
前作視聴組の方は、気楽に観た方が良いかも。
素晴らしい作品だが、
やはり168分は長いかな。うーん。
試写会やブルーレイを含めて、前作は10回ほど見ているが、あれはテンポも含めて1つの完成形だったと思う。
もちろん今回りんさんのパートを中心とした追加部分についても、違和感を生じることなく完全に作品に溶け込んでいるし、原作を大切に思う観点からすると必要な追加なのは分かるし、おそらく片渕監督の考えもそうなんだろうと思う。
もちろん今回の完全版はとても素晴らしい作品です。
ストーリーを知っていても、あの不発弾のシーンでは目を背けてしまいそうになるし、玉音放送を聞いた直後のすずさんの激しい憤りにはこちらも辛くなります。
個人的には、二つの別の作品だと思いつつ、すずさんやりんさんに会いに、この完全版も何回も見る事でしょう。
PS
上映時間が長い事に加えて、少し色っぽいシーンも増えましたので、お子さんにはオリジナル版を見せてあげた方がいいような気がします。
現に自分が見た上映回にお子さん連れで見にきている方がいましたが、後半は完全に飽きてしまったようで、物を落としたり、隣の親御さんに「まだ?あとどのくらい?」と聞いていましたので…
長くなったことを感じさせない
忘れている部分もあったので、初めてのように楽しめた。
まあ、義理のお姉さんが最終的に優しくなることがわかっていたので、イライラ感は無かった。むしろ、人間らしさを感じた。笑
令和になった今だからこそ、観るべき作品かと思います。
16年に公開された「この世界の片隅に」にとても感動し、新たなシーンを追加した長尺版との事で鑑賞を楽しみにしていました。
で、感想はと言うと…良かった。とても良かった。
観れて良かった。この作品に新しい形で改めて出逢えて本当に良かったです。
ほんわかした絵柄やテンポの良い会話に優しい気持ちになりながらも避けては通れない現実に胸がキリキリする。メリハリの効いた演出がとても良い。
すずを始めとした登場人物達が切なくも愛おしい。
コトリンゴさんの優しい歌が心に染み渡る。劇中の「悲しくてやりきれない」や「隣組」にじんと来ます♪
特に悲しくてやりきれないはいろんなアレンジがありますが、この曲を聴くと切なくなります。
この曲はこの作品のイメージをぴったりと表してますね。名曲です♪
この作品を観ると何かこびりついた物が洗い流れる様な感じで素直に優しい気持ちになります。
前作を鑑賞した時の感想は勿論文句無しで、あれが完成形に思っていましたが、新たなシーンが追加された事で違う作品と言っても過言ではないくらいに新たな魅力を引っ提げている。
また、長くなったからと言ってダレる事もなく、それぞれのキャラの描写が細かく描かれている。
特にすずの女性としての葛藤や思いがより明確になってます。
ただ…やっぱり168分と言う上映時間は長いかなぁ。
監督のやりたい事を表現するのに必要だったと言うのは分かりますし、内容的にダレていた訳ではないんですが、お話のテンポは些か落ちる感じもし、また鑑賞前に168分の上映時間と言うのは割りと萎える尺ではありますw
すずが描く世界はほのぼのとし、何処か優しい。
オープニングのばけもののおっさんはすずの想像力豊かな思いの表れ。
籠から“おっさん おっさん”と頭を叩く言い方がツボですw 大好き♪
そのばけもののおっさんとワニの嫁さんがラストに登場した時は嗚咽が漏れそうになるぐらい胸が熱くなり、涙が出そうになりました。
厳しい現実と生々しい描写の中にこういった優しいファンタジーな演出が嬉しいんですよね♪
周囲に流される様や感じでありながら、いろんな事を受け入れ、慈しむすずの優しさに気持ちが温かくなり、またすずと作品の優しさに触れられる事が嬉しい。
序盤のすずの創意工夫した料理のシーンはほっこりした気持ちになって好きなシーンです。
今作では遊廓の描写がかなり追加されていて、遊女のリンとの友情を描いていて、そこに同じく遊女で結核を患うテルとの交流を描いていますが、このテルとの交流が本筋に絡まなくても、すずの心理描写をより深く豊かに表しています。
主人公のすずの声を演じるのんさんはすずの魅力を完璧に引き出していると言っても過言ではないくらいにぴったり。
ほんわかした口調からすずの思い詰めた際の演技の緩急がとても上手く、戦争の情勢が逼迫していく中ですずのやり切れなさも見事に演じています。
前作でもショッキングだった晴美の死と右腕の欠損の事故。
家族が原爆の被害に遭い、妹のすみも原爆症に犯される。そこにリンとテルの死も追加される。
様々な死を目の辺りにするとアニメーションの演出描写と分かっていてもやり切れない切なさに胸がキリキリする。
でも、戦争が終わって、すずはその怒りを露呈するけど、解放感が漂う。
アメリカ進駐軍の払い下げの残飯の雑炊を口にした時の“美味~い!”は綻んでしまいました。
前作と今作を確りと見比べている訳ではないので、何処がどう違うかと言うのは細かくは分からないけど、それでも前作の良さをきちんと継承しつつ、新たな魅力を追加した作品に仕上がってます。
また、前作でもあったとは思いますが、ラストの戦災孤児の女の子を引き取る前の母親との描写がやっぱりショッキング。
戦争の生々しさをまっ正面から描いていますが、こう言った緩急の描写が上手いんですよね。
これがこの作品の奥深さであり、緩急の上手さかと思います。
戦中戦後の事は歴史の授業で習った以外に自分の親や祖父祖母から当時の話を子供の頃に聞いていたり、また生まれた時代が70年代だったので、微かに住んでいた所からぎりぎり戦後感の匂いを感じとれたり出来たので、なんとなく体験した様なイメージが思い浮かびました。
ただ、冷静に考えるとそれはやっぱり思い込みで阪神大震災で焼け野原になった神戸の街を見た事や、東日本大震災での福島の街の映像からの印象で、見てもいない物が見た気になってる訳なんですが、それでも劇中の焼け野原になった呉の街にはショックを受け、震災の時のやるせなさを思い出しました。
人の生死が何処か遠くの事に感じる時がありつつも、いろんな接した人達が亡くなる事が多くなると今を生きる事がとても大事で、接している人達がとても愛おしく、その関係が尊い物に思います。
それを考えると切なくて苦しくて悲しくなる。
でも、そればっかり考えてるとやっぱり辛いので何処か忘れた様になりますが、この作品は大事な何かを改めて教えてくれます。
「この世界の片隅に」がとても良かった作品だったので、改めて製作されたこの「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を鑑賞出来た事がとても嬉しい♪
平成と言う時代から令和になり、昭和と言う時代が遠い昔になりつつあるからこそ、観るべき作品かと思います。
カッコつけた言い方かも知れませんが、そういう気持ちにさせてくれる素晴らしい作品です。
ちょっと長くはありますがw、前作を鑑賞していても観る価値のある絶対お薦めの作品です♪
追加版であり完全版
前作は公開時の話題っぷりは知っていましたが観る機会が無く
今作の公開に合わせ取り急ぎアマプラで視聴しました
前作はCF実施などの公開までの経緯からは信じられないほどの
日本のアニメーション技術が結集したかのようなクオリティと
内容に心打たれましたが確かに展開的に理解しきれなかった
部分がありました
今作はそういった部分が充分補完され、白木りんのエピソードが
追加されたことですずの周辺で起こったことを
より知ることが出来たと思います
おばさんの家でスイカの皮をかじっていた浮浪児
結納の時周作が料理に口を付けなかった意味
色んな事がつながってきます
すずの抱えていた葛藤がより深まって
玉音放送の時にはじけるシーンで慟哭する姿の
悲しさもいやおうに増しています
テンポが悪くなったと言う声も聞かれますが
それは尺の都合を重視した前作で実現していた事なのだから
今作に関してそこを指摘するのはお門違いでしょう
確かに気になる部分もあります
りんが周作と花見で挨拶するシーン
そっけない挨拶でしたがそれまでの経緯からすると
そんなふうに流せるものかと観る側は思ってしまう筈
そのように周作があえて振る舞ったとも取れてしまいますが
話しを掘り下げるための追加で解釈分岐が増えてしまうのは
ちょっとと思いました
丁度スターウォーズと同時公開ですが
スターウォーズは「死を越えた精神や絆」がテーマですが
片隅は「死を越えた生そのもの」だと思います
これは戦争映画じゃなく戦時中の映画と言うだけで
降りかかる困難に自分達なりのやり方で生きていこうとする
人々の姿そのものが心を打つのだと思います
生きている意味、理由なんて
生きていなければわかるわけがありません
大東亜戦争は間違っていたと今ならしれっと言えますが
その時の日本人が青春も投げ打って国民一丸で戦った事実は
変わりません
この個人主義の時代に生きている人間にとっては尊敬しか
ありません
日本はその団結力によって大国に悪魔の兵器をも
使わせてしまう力を持った国
だからこそ戦争という行為への意見はもっと外国の受け売り
などでなく日本なりの戦争を繰り返さない発信を
もっと出来ると思います
それはこうした映画からでも十分出来ると
改めて思いました
これだ短いスパンで完全版を公開するというのも
前例が無く前作を観た人も未見の人も迷うところでは
ありますがいざ映画館へ足を運べば様々な思いで
今作を受け止めることは出来ると思います
公開劇場も少ないですが大スクリーンだとやはり
違うものがあると思いますし是非と思います
レビューを読んだだけでは、どっちを見たのか分らない「この世界の片隅に」&「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」問題
もう、何から書こう。色んな事が頭ん中でぐるぐるしてて。感想文を書きだしたら止まらない気がしてしまうけど。
広島市のお隣の市に住んでます。散歩には遠すぎるけど遠足には近すぎる距離に、宮島汽船の乗り場があります。古江も草津も通勤のJRが通る場所。行きつけの109シネマは草津だし。更に言うと、生まれ育ちは長崎市内。原爆の爆風で鐘楼を吹き飛ばされた浦上天主堂の、朝晩の鐘の音を聞きながら育ち、熱線に焼かれたマリア像の意味も知らず、その上に乗っかって遊んでました。感じたことも言いたいことも山ほどあるけれど、あっち系の話は完全に封印するとして。こっち系の事を少しだけ感想文にします。
戦時であれ。平時であれ。
痛みや悲しさや、心地よさや喜びは、その時々だと知りながらも。
縁を持ち繋がった人と、居を共にし、心を通わせ、愛を育み生きて行くこと。
それが、世界中の、どんな場所でも、人が生きて行く至るトコロで起きることだと。
世界中の全ての、至る所が、そんな場所であるべきだと。そうでなければならないと。
ただ、それだけの物語でしかない訳で。
”In this corner of the world” と訳されるタイトルは、”Here there and everywhere” なんだよなぁ。なんて前から思ってます。
"居場所なんて、そうそう無いなりゃせん"
リンさんの言葉はホントなんだろうか。少なくとも、あの場面に居た二人の女性の居場所は、そうそう無くなりゃせんとは思うけどね。居場所の無い人間はいると思うけど、そうしてしまっているのは、その人自身だって思う。
コトリンゴさんの歌で幕を開けた時点で、ジンワリと涙が滲むのには参るけど。エンドロールのエピローグの紙芝居では、広島から付いてきた女の子(なんで三つも名前があるんですかw)が、家族として成長していった様子や、リンさんが座敷童を経て娼館に流れ着くまでの物語の紙芝居が見れます。最後の最後まで涙を絞り取りに来るんかいw
白木リンとの繋がり、周作との関係。終戦前後の北條家の描写を中心にストーリーを書き足し、ちょっとだけ「大人の恋感」が出たりしてるだけ。「丸っ切りの新作感」は、はっきり言うと「ゼロ」。スピンオフでも続編でも無く、ただその内容と解釈の「深化」を図っただけだと思います。俺なんか、同じ映画を何回も見るのが当たり前なんで、「全然OK」なんですが、人によっては苦言も出るだろうと言う作品でした。が。
良かった。とっても。やっぱり。
でさ、もう止めようね、これw
頼むから、これっきりにして欲しい。
こんなの、二つも三つも要らないですからね!
類似品、出すんじゃねーぞw
のんとコトリンゴ最高!!
前作にリンとのエピソードを加えた完全版でした。前作とまったくちがう新作といえるできでした。笑えるところ…泣けるところがあり、脚本のすごさに引き込まれます。最高の一言!
全43件中、21~40件目を表示