「旦那が無駄に(笑)いい男、よく見ると展開が少女漫画(笑)」この世界の(さらにいくつもの)片隅に あずさんの映画レビュー(感想・評価)
旦那が無駄に(笑)いい男、よく見ると展開が少女漫画(笑)
素晴らしい作品であることに疑いの余地はない。コロナ禍の今見ると、緊急事態が音もなく日常になっていくことの恐ろしさがリアルに伝わってくるし。
ただ誰も言っていないようなので書くけど旦那(周作さん)が無駄に(笑)いい男なんだ…子供の頃たまたま出会って見初めて、成長して凛々しい軍人になり「結婚してくれ」とやって来る…完全に女の幻想の世界やな(笑)結局この男がよかったから嫁ぎ先に残る決意をしたんじゃないんかい、昔はもっと最低な男いっぱいいたやろ、とか意地の悪いツッコミを入れたくなってしまう。結婚後も乱暴だった小学校時代の同級生が嫁ぎ先にやってきて「昔からお前が好きだった」「そんな、私はもうあの人を愛しているから何を今さら!」という超メロドラマ展開…このヒロイン、これも少女漫画によく出てくる「ドジで一生懸命な女の子」だしね…こんなんで「昔の女性は家庭に縛られて悲惨でした」とか言われてもなー。
極めつけは遊郭の女性、白木リンとの関係。夫・周作は結婚とともに遊郭通いをきっぱりやめ、妻一筋になったという(というより、遊郭のリンに入れあげるのを止めるため、親類縁者が持ち出した結婚だった)。えー、ほんとかよ、男って甲斐性があれば二人三人ぐらい同時に愛せる生き物なんでっせ?しかもそれが咎められなかった時代、結婚した後もこっそり通ってたんじゃないのかなぁ?花見ですれ違っても「お久しぶり」って挨拶するだけって、逆に怪しくないか?
せっかく夫婦の夜の営みのシーンまで描くぐらいなら(笑)、夫の体から遊郭の香りがしてくるとか、そこまで際どく描けばよかったのに。嫉妬に燃えていたら原爆が落ちてリンは死んでしまいました、とかいう展開の方がよほど怖い。
だが例の小学校の同級生が向かう先は生きては戻れない海戦で、夫が逞しい肩で庇ってくれる先では砲弾で何人もの人が亡くなっている。これでは胸キュンどころでない…実家の親も原爆で死んでしまうし…
結論として、旦那がちょいと女性にとって都合のいい設定だったもので、戦争の悲惨さを見る作品としては甘すぎ、胸キュン作品として見るには不謹慎すぎる、どっちつかずなモヤモヤ感が残る…ちなみに…旦那役の声優は細谷佳正、やたら色っぽい。やはりこの「いい男」、完全に無駄である…