狼チャイルドのレビュー・感想・評価
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意外な産物
演出も撮影も俳優も巧い。国籍とホラーな邦題にあなどって見たら、完全に予想を外れた。長い映画で、二部構成とも言える。前半はまるでアブデラティフケシシュのように官能的で、後半はジョンランディスの楽しさがあった。総じて長すぎるものの、センスがいい。監督が二人いたので、前後での交代を、けっこう強く感じた。とくに前半は本気で見入った。(前半部の)人物描写と、ブラジリアかサンパウロか解らないが幻想的な都市の描き方がとても魅力的だった。後ろを短くまとめたら、傑作だったと思う。アナが厳しく育てられる過程で、食事や姿勢のマナーを学んだことが、タイトルGood Mannersの根拠になっているはずだが、後手にバトンを渡すと、それが回収されず、すこし鈍調な狼男アメリカンになる。なんとなく惜しい映画だが、悪くない。半分はほんとに瞠目だった。
母性に勝るものはないよね。
2部作のような展開の上手さに引き込まれます。
なんとなく内容が読めてしまうのだけれど、深い愛情に答えるように素直に成長してきた人間の部分、本能から逃れられない野生の部分。
どんな場面でも母性に勝るものはないと改めて感じました。
良品。
守りたい想いと飛び出したい気持ち
あらすじも何も入れないまま観たので、色々混ざりこんだ話の展開に驚きの連鎖でとても引きつけられた。
垣根を越えた恋が血生臭くなり、急にホラーになったり小さな大冒険になったり家族の愛だったり異形の者の残酷な運命だったり。
前半、寂しい者同士で傷を塞ぐように結ばれる様にグッときてたまらなかった。
貪るようなキスで本当に貪っちゃうの好き。
アナのダンスシーンが可愛いし、ガラッと話が展開する時の切り替わり方にキュンキュンする。
悲しくて切ない出来事も多いけど、童話テイストな話の進め方や人の優しさを感じる空気に暖かくもなれる不思議な作品だった。
ラストシーンは激しく揺さぶられる。
あの後のことを考えても現実的にどうしても苦しくなって、でももしかしたら、とも思えてくる。
女の子がイヤイヤと言うように首を振っているのが印象的。
守りたいものを必死で守り抜こうとするとき、人は何よりも強くなるんだと感じた。
ダイヤモンド
サンパウロで一人暮らしをする金持ち妊婦と彼女に雇われ住み込みで働き始めたベビーシッター兼家政婦の女性、及び、産まれた狼男の話。
金持ち妊婦のワガママっぷりとか、彼女とシッターの関係とかははまだ良いけれど、細かい設定をいちいち全部説明しなくても良いのじゃないかという序盤の流れ。
しかしながら妊婦に変化が現れてからはぐいぐい引き込まれた。
子供だましなところもあるけれど、ホラーであり、ファンタジーであり、童話であり、優しく哀しい物語で胸が熱くなった。
邦題が既にネタバレなのが気になりますが
高級コンドミニアムに住む出産間近のアナが自分の身の周りの世話をしてくれる住み込みの家政婦を募集していたところにやってきたクララ。育児の経験がないことから不採用と告げたところでアナは発作を起こしてしまい、とっさに機転を利かせたクララを気に入り採用することにする。アナは家族も友人もいない孤独な女性だったがクララにはすっかり心を許していた。やがてアナは時折深夜に奇妙な行動をとるようになるが翌朝何も覚えていない。アナの奇行にある規則性があることに気づいたクララは、深夜にフラフラと外に出ていったアナを尾行したところで信じられない光景を目撃してしまう。
と、ここまではだいたい想像のつくクラシックな展開。しかしそれはあくまでこの映画の前半部分に過ぎず、この後意外な展開となり阿鼻叫喚の果てに辿り着く結末が美しい。ブラジル映画には時折突然変異的に傑作が現れますが、本作は正にそれ。『シェイプ・オブ・ウォーター』、『ぼくのエリ』、『パンズ・ラビリンス』といった作品に比肩するダークファンタジーの傑作に仕上がっています。原題は直訳すると『良いお行儀』という意味ですがこのタイトルが暗示するテーマがものすごく重いです。しかしこのネタバレお構いなしの邦題はなんとかならなかったのでしょうか、それだけが残念です。
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