「「除梗率50%」派手ではないが、いい雰囲気の丁寧な良作」おかえり、ブルゴーニュへ 雨はにわか雨さんの映画レビュー(感想・評価)
「除梗率50%」派手ではないが、いい雰囲気の丁寧な良作
外国暮らしで長年不在だった長男、味覚に優れた独り身の長女、妻の実家に婿入り? した少し年の離れた次男
父が亡くなりドメーヌのワイン造りを担う代となった三兄妹。しかし在庫のワインを売っても払いきれない相続税を課せられどうするかというテーマを中心に、それぞれの家族模様を交えて描かれます
フランス映画というと人物たちがやたらと激しく罵り合うように口論してケンカ別れして話の緊迫感を高めるようなイメージ(偏見?)が自分にはありますが、そういうありがちな、少なくとも後味の悪い展開はこの映画にはないです
そしてもちろん自分たちで初めて担うワイン造りがもう一つの話の中心です
フランスには行ったこともありませんが、ブルゴーニュってこんなところなのか、ぶどう畑ってこんなふうなんだ、収穫祭はこんな感じなのか、冬はこんなふうにぶどうの木の手入れをするのか、とか一年間の雰囲気を味わえるのがいいです
——以外、ワイン造り関係で軽いネタバレあります
まずは味に大きな影響を与えるぶどうの収穫日の決定(糖度と酸味の兼ね合い、雨など)、収穫で弾くぶどう。除梗率(房についてる小さな枝をどのくらい取り除くか、ということだそうです)。もっと後では澱引きの有無、瓶詰めのタイミングなどなど
三兄弟が幼い頃、父にワインの味わいかたの手ほどきを受ける回想シーンなどを交えて、ワイン造りの一つ一つを、父ならばどうしただろうかと思いを馳せ迷いながら決めていく
父と祖父の作ったワインの味わいから偲ばれるそれぞれの人間性。そして新たな担い手となった長女も、できたワインの試飲で、兄妹と杜氏さん?に、彼女らしい味だと評してもらえるのがいいシーンです
—— 以上、軽いネタバレ
多少の話の展開はありますが、しかしプロットとしてはそれほどダイナミックに進むわけではありません。そういう意味では少し物足りない感じもありますが
しかしプロット優先ではなく、ただ人や景色を、細かい枝葉を少し残しながらいろいろな姿を丁寧に描きたかったのかなとも思います
この監督さん、昔、「猫が行方不明」という映画を公開時に観てとても気に入った覚えがあります。街中で行方不明になった猫を少し気弱な青年が探すなかでのいろんな人とのやりとりを描いた話だったと思いますが、本作よりももっと軽いユーモアが多い描き方だったと思います
本作でも声出して笑ってしまう場面が何回かありますが、ああいうのがもう少しあっても良かったかな。猫が行方不明も見直したくなりました