「ワイン造りと映画造りが同期していくような絶妙な味わい」おかえり、ブルゴーニュへ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
ワイン造りと映画造りが同期していくような絶妙な味わい
かつて映画とワインは似ていると教えられたことがある。映画は物語の中で時を重ね、独特の渋みや重み、その背後にある仄かな隠し味や香りを帯びながら、人と人との関係性を丹念に熟成させていくもの。その工程が一つでもうまくいかないと、味わいにまとまりがなくなり、満足できるクオリティとは程遠いものとなる。
クラピッシュの待望の新作は、ワイン造りと映画造りがまさに絶妙に同期していくかのよう。丹念に手間暇かけた仕込み、そして深みのある味わいがなんとも胸を打つ。三人の兄妹を隔てた長きにわたる歳月。そして父の死をきっかけに彼らが一心同体となって進めていくワイン造り。幼い頃の記憶が随所に蘇り、このワイン一杯に様々な時間の流れが込められていることに思わず溜息がこぼれてやまない。何かそれほど劇的な展開が待ち構えているわけではないにしろ、めぐりめぐる季節の中で、人もまた成長し、じっくりと成長を遂げていく様を堪能した。
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