「深いぞ泯さん」アルキメデスの大戦 aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
深いぞ泯さん
山崎貢監督なので、とりあえずCGが凄いというイメージ。これまで、建築中の東京タワーやら、零戦、石油タンカーなど、現実にあったものをCGで再現してきたのだけど、今回は対象が、かの戦艦大和。第二次大戦の物語や兵器が好きなので、それだけで、たまらないものがある。巨大さ、リアルさなど、映像だけを見ているだけで楽しめる。同監督の宇宙戦艦の方も映像は良かったけど、こちらの方が"実在した深み"みたいなものを感じて、存在の重さがある。私の勝手な観る側の想いだと思うけど。
それら建造物をモチーフに、関わった人間の生き方が主体となって物語が紡がれる。あくまで人間ドラマの映画なのだ。大和を作るべきか否かを巡って、海軍内部の対立と、登場人物それぞれの正義に小突き回されながら、数学を使って正義を貫こうとする天才、櫂直(かいただし)。実直で天才肌の軍人といえば、山崎豊子の名作「不毛地帯」の主人公壱岐正(いきただし)にダブるのだけど、モチーフにしたのかな?
さて、豪華な役者陣も盛り上げる。主人公の櫂となる菅田将暉は、実直な若き天才にぴったり。彼を見出した山本五十六役は舘ひろし。豪胆な味を出していて、イメージにあっていた。最初は櫂に反発しながらも、次第に心酔してゆく付き人田中には柄本佑は、真面目コミカルな役で奮闘。櫂を慕う令嬢に、いまをときめく浜辺美波。演技の見せ場は少なかったものの、和美人は画面に映えますね。でも、なんといっても存在感を発揮していたのが、頑固な造船技師の田中泯。静かながら、迫力があり、清々しい。"静謐な演技"というのが良い形容だろうか。彼の存在で全体が締まったように思えた。
物語は何を目的に船を作るのか、そこにある正義とは何かをテーマに話が進む。最初は海軍内部の権力争いに見えるが、やがて日本を守るためにそれぞれが何を考えているのかが見えてきて、最後に深い洞察が展開される。ああ、日本人の悲しさよ。切ないなあ。
色々てんこ盛りで、ツッコミどころもあるけど、充分楽しめた作品でした。