「平山の説教が刺さった、良かった、萌えた。」アルキメデスの大戦 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
平山の説教が刺さった、良かった、萌えた。
予想外に良かった。
先に難癖付けとくと、あの数式ではあのカーブにはなりません。eのべき乗必須、エクセルでも描けるのは誤差関数(erf)あたり。大阪の造船所では二階微分と口走ってましたが、関係無いですね。確率密度関数か、χ二乗分布あたりが当てはまる関数だと思います。
以上、無駄にオタクな突っ込み終了。
柄本祐も、浜辺美波も、菅田将暉も、初めて良いと思った!櫂直の天才ぶりに惹かれ、尊敬して行く田中が可愛い。しかし女子の顔、測る?触れたくなるでしょ、唇とかに、普通。
全てを見越した上で、大和を設計した平山に心打たれます。戦争しない選択を、国民は許さない。いや、それを認めない人が多い令和の日本。平山がお説教してるみたいに聞こえる、櫂直に向かってでは無く、日本人に向かって。
ここが、凄く良かった!
平山の事務所、「カメ止め」の浄水場ですよね。賭ケグルイでも使われてましたが、映画の聖地化してます?
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(7/28追記)何故「アルキメデス」なのか?
◆「詐欺を明らかにする」
アルキメデスの功績として有名なのは「金の王冠の純度」を、体積を計測することによって明らかにした件です。
あるとき、シュラクサイのヒエロン王は金の王冠を作らせて神殿に奉納。そこに、職人が金を抜き銀をを混ぜた、との告発。ヒエロン王はアルキメデスに職人の「詐欺の事実を明らかにすること」を命じます。それが難しい作業であった背景は、神殿に奉納されてしまった王冠を、壊したり傷づけたり溶かしたりしてはいけないこと。要するに、混ざりものの証明のために「必要な情報が手に入らない事」。
アルキメデスは、水を一杯に浸した甕に王冠を沈めて体積を測った、と言うのが一般的に広まっている逸話ですが、現実には表面張力の影響で正確な計測は不可能。「重さと軽量についての歌」と言う作者不詳のラテン語の詩の中では「アルキメデスは王冠と同質量の純金を用意。天秤に王冠と純金を掛けてつり合いをとり、そのまま、全てを水中に沈めて行った。純金と銀を混ぜ込んだ王冠に働く浮力には差がでるため、水中では天秤が傾く」。
◆「二重帰謬法」と「方法」
アルキメデスの10数冊の著作は二つに大別されます。「図形の求積に関わるもの」と「梃の原理や浮力の原理に関わるもの」。「図形の求積」に関しては、その証明法として「二重帰謬法」を用いました。一般的に、数学の授業で見慣れた数々の図形、「円に内接する多角形」は、まさにこれに相当します。
また「方法」という著作の中では立体図形の重心を求める方法を記していますが、その方法として紹介されている事例は、放物線を回転させてできる回転放物体の体積や重心を求める際、「中心を通る軸に沿って立体を切断」します。
見る前は「アルキメデス数学じゃ大和のダメさは証明できない。ニュートン力学は必須」くらいに考えていましたが、視点が違ってました。ちゃーーーんと「アルキメデス」だった!
7/28更に追記
(数学が苦手の方のための蛇足的な解説)
櫂少佐は「積算じゃなくて...」とつぶやきます。
積算、つまり、材料費や加工に必要な費用、人件費、設備投資など、「量」として計測が可能な「物理量」を元に計算を行い、結果を積み上げて建造費用を算出する。ただし、この方法では情報が不足し過ぎているし時間も無い。
そこで「統計的に推測する」と言う方法に転換します。「過去の実績から、建造費用と何らかのモノ(ここでは鉄の総使用量)の関係を見出し回帰式化する」。櫂少佐は「鉄の総使用量と建造費用には相関がある」と発言します。この関係を数式化したものが「回帰式」で、会議の場で櫂少佐が黒板に書いたものです。
単純な関数、f(x)=ax+b を例にすれば、f(x)が建造費、xが鉄の総量。計算していたのは代入計算。
黒板に書いたグラフから推測すれば非線形回帰で、指数分布関数と言うのが必要になり、櫂が黒板に書いたような計算式には成り得ませんが、そこは重要では無いと思います。
bloodtrailさんへ、
お久しぶりです。
この映画、ドラクエよりも先に公開して大正解だったと思います。
公開順が逆になってたら、観客動員数もかなり減っていたような・・・
もしかして、予想してたのかもしれませんが・・・w
kawausoさんへ
コメントありがとう御座います!
いやぁ、何か整数4桁の1の位まで正確に予測できるはずないやん、ですし、ニコイチ発注で不正なデータが入っていたら、当たるはずもありませんね!
以下、触れない方が良いかもしれないのですが 笑
櫂少佐の説明(建造費はあるところをピークにし、徐々に下がる)を鵜呑みにすると、「大和は潜水艦より安く造れてしまう」んですよ。櫂少佐は「建造費」と言ってますが、「建造単価」が正しいんです。家を建てる時の「坪単価」みたいなもんで。私も感想文の中では、櫂少佐の説明に沿って書いてますけど。混乱を避けるために。
主題は「算数の中身」じゃありませんから、冷静にツッコミつつも櫂少佐達を応援してました ^_^!
鑑賞中に数式の中身など、観ていませんでしたし、鋭いご指摘で感服してレビューを読みました。
が、劇中でも示唆されていたとおり、ニコイチ発注が大和の発注以前にもあった訳で、主人公が関数を試算したデータに、このニコイチ発注のデータが入っていれば、劇中のような大当たりの予測計算結果が出る訳がありません。そして、検証データをニコイチ発注した艦船にすれば、当然、予測計算結果と異なります。
つまり、あのシーンは少なくとも2つの奇跡的な事象が重ならないと生じないことになり、私は、あのシーンがもっとも大笑いしました…。良いんです。お話だから。
そして、そのシーンがあっても作品の評価は変わりません。良い映画だったと思います。
レビューの感想まで…。
MAKOさんへ
コメント、ありがとうございました!
「いいマトにしかならないデザインと配色」ですか...
私、一時期、というか、二三時期、「プラモ」にはまっていたことがあります。ロンメルとTigerとMig23とF16は結構作りまして、彩色にも凝りまくり。基本的に戦車も戦闘機も「迷彩」。ロンメルは砂漠に溶け込む様。Tigerは「森」。戦闘機は腹面は「空色」、上面は「山岳地帯」に同化する色。濃い岩肌の色のMig23と、全身「空色」のUSAFのF16がお気に入りでした。自分では「塗った事」はありませんが、おそらく戦艦用の色で「Dark Sea Grey」と言う渋ちんの色があって好きでした。この色も、今思えば「冬の北海」に溶け込む色だったんでしょうね。
大和の甲板は木材。上空から爆撃する米軍機にとっては、恰好の「識別色」だったんでしょうね。目立ちすぎます。背の高い艦橋も潜水艦の潜望鏡からは良く見えた事でしょう。海軍の驕りの象徴、誤った戦略で自滅した事例、などと言うのは簡単なんですが、大和と言えば「丸腰で片道切符の特攻に向かう悲哀とやるせなさ」。
この「やるせなさ」を戦闘シーン無しで描き切れているところが好きです。
数学に関しては全く解りませんが楽しめた映画でした。この監督イマイチ好きじゃないんですが。「寄生獣」は唯一合格点。レビューも大変参考になりました。
平山みたいな考えの人物が当時実在したか微妙ですが、大和が海上ではいいマトにしかならないデザインと配色にされたのは事実だそうで、当時の軍人さんに軍艦製造に忸怩足る思いが有ったのは本当だったのでしょうね。
ま、何にせよ戦争なんて大和と同じく非合理的なもんです。
qooさんへ
コメント、ありがとうございます!
劇中、大阪の造船所の倉庫で、櫂少佐は何かを紙上に「PLOT」しました。造船所に保管されていた、過去に造船された「戦艦」や「潜水艦」のデータから、「鉄の総量」と「建造費」を二軸上にPLOTしたのだと思います。
線形回帰なら最小二乗法で関係式を導出することが可能ですが、PLOTされたデータは、「鉄の総量が多くなるにつれて建造費が高くなり、ある量で建造費がピークを迎え、それ以上になると逆に建造費が安くなっていく」と言う非線形の関係にありました。建造費がピークとなるときの鉄の総量をXとすると、Xを頂点とする指数分布関数に似た曲線を描いていました。私なら、指数分布関数にデータを当てはめていき、PLOTしたデータの分布に最もフィットする変数を探します。
「量の変化」や「変化率」から、すなわち微分方程式から目的となる数値計算をするにも、「何らかの普遍的な法則に従う関係式」が必要(例えば釣り合い式)だと思うのですが、あの場面ではそれが存在しないのではないかと思います。よって、櫂は「相関がある」ことをPLOTした図から推測して「推測統計」に走ったのだと思いました。
微分方程式を使って建造費を計算したとしたら、具体的にはどうやれば出来ると思われますか?私のセンスでは、そこがイメージできなかったもので。
建造費と鉄の総量から近似式を作成して求めたということでしょう。微分方程式を使ったってことでしょうか。どうせ自分の作った設計図なんだから鉄の総量も近似式を使えば速かったのではないですかね。
☆Night☆さんへ
コメントありがとうございました! 拙い説明文ですが、お役に立てれば何よりです。
算数の事が判らないと、櫂少佐達が、どうやって短時間で建造費を算出できたのかが、分らないだろうなぁと思いまして。計算能力が天才的ならば、実際に回帰式を導出するのも可能かも知れないし無理かもしれないし...と言う微妙なところが絶妙です!
つまり、櫂の偉業は全くのトンデモバナシでは無いと言う点がミソなんだと思いました。
板が賑やか&bloodtrailさんの数学的な補足で、観賞後の理解がより深まりお礼が言いたくて書き込みをしたくなりました。
映画を観た後に、喫茶店でタバコを吸いながらレビュー読むのを楽しみにしてる50のおやでです♪
物理と数学がついていけなくなったので、文系に進んだ人間としては、観賞しながらその計算式では…なんて羨ましい楽しみかたですょ。
菅田将暉には興味無かったのですが、今作でファンになりました。個人的には柄本佑との二人の絡みが最高でした。
菅田将暉と鶴瓶の気持ちの転換の軽さが少し気になりましたが、後は最高に面白い映画でした。一度設計したからには本物を見てみたいはずのシーンの菅田の表情にはグッとくるものがありました。
最後に繰り返しになりますが、bloodtrailさん知的な補足をありがとうございました♪
自分も楽しめました。
ただ、平山の台詞は、戦争へひた走る世論と軍という環境下で自分ができることの最大化をしたと見るのか、流れを変えることはできずに自己満足的なことを目指したと見るのか、迷います。
観ていた間は後者。櫂や平山のレベルの数学者達ですら、流れを変えることはできないのだと。ヤマトが沈んでも戦争は終わらなかった、などと。
このレビューを読んで、「なるほど、そういう見方もある」と思った次第です。
bloodtrailさん
これほどまでの理系とは‼️
今までまんまと騙されてました(^.^)
なるほど、アルキメデス‼️だったのですね。勉強になりました。決して身につくことはないのですが。
理解不能な内容なので共感クリックは矛盾なのですが、文系的にはありですからね。
bloodtrailさんへ
「結末」について何もわかっておりません。そのまま、今月末に見に行くことにいたしました。楽しみです。ありがとうございます。
MaRuKo31さんへ
鏡子の顔を測る場面でCGで描かれた弧を見て「アルキメデスの求積やんか」。建造費のウソを暴け、で「王冠の逸話そのものやん」。大和の図面をハサミで切り始めた時点で「重心の求め方や」。櫂少佐の行動が、アルキメデスの逸話を彷彿とさせるものばかりで、ゾクゾクしました!
コメント有り難う御座います。題名に敗北や屈辱といったネガティブな単語や誤謬等の難しい漢字wを入れると、興行的に失敗するというのが有るんでしょうネ、経験則として。
それにしてもアルキメデスが、黄金の👑の真贋を測った故事から来ていたとは!…自分は只、天才数学者だからアルキメデスかと…www
bloodtrailさんが頭良過ぎて…数学の解説は、後半の初心者🔰向けが、一番良く分かりましたww
今後も宜しく(^-^)/
talismanさんへ
私の感想文には「結末」を明記してませんが、この「結末」は知らずに見て下さい。戦争を止めるために奔走した若者達の、10日間の戦いの物語です!あ、11日だったかも。いや、12かなw?
個人的には、今年の邦画の一番に推したいくらいの力作でした。
ぺっえさんへ
ご指摘通り、ネタバレに変更しました!
確かに、物語的には2人が恋仲になってしまうのはダメですね!
とりあえず接吻くらいしとけ、と煽りたくなる私は凡人以下ですw
美しい物を見ると計らずにはいられないのです。簡単に触れてしまっては
ただの凡人です。あと、触れてはいけない方なのです。櫂は理性もある天才なのだと思います。ストーリー的にも
触れてしまってはつまらない。
私はまだ原作漫画を見てないのですが顔を計り始める前の二人の会話あると思うのですが映画に入れて欲しがった。
でも、これネタバレにしないといけないコメントだと思います。
お疲れさまでしたw
私も先程487分終了しました。
全部予約してあったので半分自己脅迫です。
bloodtrailさん統計学詳しいのですね!
仕事で昔触りだけ勉強したことありますが私にはちんぷんかんぷんですw
明日は417or505分行って来ます!
凄く詳しいですね!
数字は中学レベルで止まってる俺としては、別なオタク面を…
クレジットには多分芸者の一人だと思いますが、佐々木心音の名前を発見!
柄本佑とは『フィギュアなあなた』でエッチぃ関係で共演してました😅