「素晴らしい映像とそうでもないストーリー」海獣の子供 unchainedさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい映像とそうでもないストーリー
素晴らしい映像だった。まるで映像の暴力、映像の洪水、息もつかせぬ色とりどりのアニメーション。そこに米津玄師の深みのある音楽が花を添えていた。
しかしそれに対してストーリーがあまりにも陳腐、チープなのだ。漫画の原作自体はとても素晴らしいのだけれども、長編を2時間の映画に収めることに残念ながら失敗していた。
いや、漫画自体も突き詰めてみればそれほど深みのある哲学的な内容のものではない。美しい絵柄がまるで人生の深みを描いているように錯覚させている。それはそれで、原作の力量である。
しかし映画は残念なことにその虚飾を取り去ってしまっていた。このインターネットの時代、スピリチュアル的なものは、底の浅さが露呈してしまっている。嘘は嘘だとバレてしまう。クジラは宇宙とつながってなどいやしないのだ。
映画になってしまうとそれが如実に現れてしまうのである。その点この映画は、嘘をつくのが下手であった。それはつまり作品に携わる人たちが、あまりに誠実だったためであろう。
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